消費者にとっては、住宅取得は一生に一度か二度の、人生最大の買物です。そんな大切な買物で失敗は許されません。そんな会社、そんな人物に人生を狂わせられては大変です。買いたい物件を扱っているのが、三井のリハウスや住友のステップ、東急リバブルなどの全国ブランドであれば、まあそうおかしなことはしないでしょうが、そんな有名な会社ばかりではありません。一時に比べれば減っているとはいっても、小規模な不動産会社、駅前不動産などもまだまだたくさんあります。
それまで知らなかった、名前を聞いたことがない会社を通して取引する場合には、免許番号の(1)にはくれぐれも注意すると同時に、念のために『業者名簿』を閲覧して、経営内容などもチェックしておきましょう。
『業者名簿』は都道府県庁や国土交通省で閲覧が可能
先に触れたように、不動産取引に携わるためには、国や都道府県に届け出て免許を得なければなりません。免許を得れば、宅建業者として登録され、届出内容が『業者名簿』として公開される仕組みになっています。事業所のある都道府県庁の不動産担当課に足を運べば、この『業者名簿』を見ることができます。複数の都道府県で活動している会社に関しては、国土交通省でも閲覧が可能です。『業者名簿』では、免許証番号のほか、「業者の現況に関する事項」「業者の経歴に関する事項」「営業保証金等に関する事項」などを見ることができます。主な項目を挙げておきましょう。
・業者の現況に関する事項
商号・名称、事務所、代表者・役員の氏名、専任の宅地建物取引士などが明記されます。また、業務に携わっている社員の名簿もあって、その従業員証明書番号の頭部4桁は勤務開始年月日(西暦)を示しています。長く勤めている社員が多いかどうかで、会社の体質を知ることができます。さらに、業者団体への加入状況をみれば、アウトサイダーではないかどうかがわかります。
・業者の経歴に関する事項
代理、媒介の態様別、宅地、建物の分野別などで営業の実績が記載されています。また、会社の資産内容や納税状況も記載されます。節税も大切ですが、キチンと収益をあげて、納税していることが社会的存在としての事業者の使命ですから、その点も参考になります。さらに、過去5年間の行政処分歴についても記載されているので、当然ながら処分経験が多い会社とは、あまりお付き合いしないほうがいいでしょう。
・相談して閲覧できない内容は担当者に相談
この『業者名簿』の閲覧には、決まり事があります。東京都の場合、閲覧できるのは表にあるように、開庁日の9時から17時までで、1社当たり300円の手数料がかかります。また、カメラ撮影、コピーなどは禁止なので、ノートと筆記具を持参して重要な項目はメモをとっておく必要があります。
どうせなら、時間の余裕をみて訪問し、窓口で相談してみてはどうでしょうか。ほとんどの都道府県では専任担当者をおいて、各種の相談に対応しています。直接話を聞いてみれば、まだ『業者名簿』には掲載されていない、最新の情報をゲットできるかもしれません。ある担当者はこう語っています。
「事前相談が大切です。契約してしまってから相談に来られても、簡単には解決できません。不安を感じる場合には、とにかく一度ご相談ください。トラブルに巻き込まれるのは大半が相談に来られなかった方で、逆に相談に来られた方がトラブルに遭うことはほとんどないのではないでしょうか」
失敗は許されないマイホーム取得だけに、手間ヒマを惜しまずに、シッカリと調査した上で、契約書にサインするようにしていただきたいものです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
●東京都の宅地建物取引業者名簿の閲覧窓口
・閲覧窓口:東京都新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内
電話:03-5320-5072(直通)
・開設時間:都庁開庁日9時~17時
・閲覧手数料:1業者につき300円
・閲覧所での禁止事項
閲覧書庫への立ち入り
写真・ビデオ撮影、閲覧書類のコピー(ハンドコピーを含む)など
業者名簿を汚損または棄損する恐れのある行為
その他係員の指示に反する行為
(資料:東京都ホームページより作成)
●山下和之
住宅ジャーナリスト。各種新聞・雑誌、ポータルサイトなどの取材・原稿制作のほか、単行本執筆、各種セミナー講師、メディア出演など多方面に活動。『山下和之のよい家選び』も好評。主な著書に『よくわかる不動産業界』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)など。