富士山の世界遺産登録で、富士急ハイランド株価が爆発! 観光客見込み、レジャー関連も高値に
(「Thinkstock」より)
富士山の麓、山梨県富士吉田市に本社を置き、鉄道やバスを運行するほか、レジャー施設の「富士急ハイランド」やリゾートホテル、ゴルフ場を展開する富士急行の株価は、5月1日に値幅制限の上限(ストップ高)となる前日終値比150円(16.4%)高の1065円まで値上がりした。2日も高く、23年ぶりの高値をつけた。
国内外から観光客が増え、鉄道・バスが利用される。ホテルなどの収益拡大も見込めるとして買いが入った。富士急の株価が1000円を超えたのは、1991年6月以来のことだ。
5月1日の株式市場では、JR東日本やJR東海、旅行大手のKNT-CTホールディングス(旧・近畿日本ツーリスト)、宿泊予約サイトの一休、アウトドア用品のヒマラヤなどの鉄道・観光・登山関連株が軒並み値上がりした。
驚いたのは、富士山とはおよそ関係がない銘柄まで暴騰したことだ。株式市場は連想ゲームが大好きだから、社名に「富士」と付く上場22銘柄が物色された。兜町ではこれを“富士プレミアム”(上乗せ分)と呼んでいる。
5月1日には、富士フイルムホールディングスが131円高の2129円で引けた。高値は2148円(150円高)で年初来の高値をつけた。4月30日に発表された2013年3月期決算の内容が好感されたものだが、“富士プレミアム”分が上乗せされたのかもしれない。ゴールデン・ウイーク明けの5月8日には2525円と続伸した。
富士重工業も“富士プレミアム”の期待が大きい代表銘柄だ。5月8日に発表した13年3月期決算が円安の恩恵で、営業利益と純利益ともに最高益を更新した。好決算を受け5月9日の株価は、上場して以来の高値、1998円をつけた。独立系の大手ソフト開発の富士ソフトは4月26日に2678円の年初来の高値をつけており、まだ上値がありそうだとアナリストは言っている。
このほか、富士通系ソフト開発会社の富士通ピー・エス・シーやエアコンメーカーの富士通ゼネラルなどが年初来高値を更新した。ただ、親会社の富士通は大規模リストラ、事業部門の売却など苦戦が続いており、“富士プレミアム”からは縁遠い。
変わり種は、10年末に企業再生支援機構の支援を受けて再生中の富士テクニカ宮津。富士テクニカと宮津製作所が事業統合した自動車用プレス金型の大手だ。
ついには「フジ」や「不二」まで物色されるようになった。大阪が営業地盤のフジ住宅、不織布メーカーのフジコー(東証マザーズ上場)、エレベーター関連のフジテック、厨房機器のフジマック(東証2部)も年初来高値を更新した。機械の不二越も5月9日に480円の年初来の高値となった。洋菓子の不二家まで買われた。ここまでくると、悪ノリの度が過ぎるハシャギぶりにも見える。
世界遺産、富士山関連ビジネスの大本命は、やはり富士急行だろう。5月8日に決算を発表したが、「千載一遇のチャンス」(和田一成・執行役員経営管理部長)と鼻息は荒い。
14年3月期(連結・業績予想)の売上高は前期比5.6%増の472億円、本業の儲けを示す営業利益は同10.8%増の38億円、当期純利益は同4.7%増の13億円と増収増益を見込む。富士山の世界遺産登録を見据えた観光客の増加や、富士急ハイランドの新規施設の導入などを織り込んだ数字だ。JR中央線との直通電車を増やし、定期観光バスの復活も計画している。
13年3月期の売上高は前期比1.7%増の447億円、営業利益は同21.6%増の34億円、当期純利益は同61.3%増の12.8億円だった。
富士急の株価は5月2日に年初来高値の1199円をつけた。年初来安値494円(13年1月7日)の2.4倍。だだ、PER(株価収益率)は83倍で、割高感は否めない。
これまで富士山銘柄といえば、富士山噴火で影響を受ける銘柄を意味していた。そのマイナスイメージを吹き飛ばしたのが、富士山の世界遺産への登録だ。富士山周辺の観光地は間違いなく賑わう。鉄道・観光に活気が戻ってきた。
(文=編集部)