居酒屋チェーンの“勝ち組”に数えられる鳥貴族が28年ぶりの値上げに踏み切ったのは、10月1日のことだ。これまで「280円均一」を売りに人気を集めてきたが、全品298円(税別、以下同)に変更した。値上げの理由は、主に材料費の高騰と慢性的な人手不足による人件費の上昇とされている。
消費者が気になるのは、この値上げによって毎月の飲み代がどう変化するかということだろう。そこで、鳥貴族の値上げが家計に与える影響について、ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏に話を聞いた。
鳥貴族の値上げ、1回130円の負担増?
まず、鳥貴族の値上げ前と値上げ後の価格を整理しよう。前述したように、鳥貴族はビール、焼き鳥、サラダも含め、全メニューが280円の均一価格だった。このほか、2時間の食べ放題・飲み放題プランとして人気の「28とりパーティー」があり、こちらは2800円だ。
しかし、10月1日からは全メニュー298円となり、「28とりパーティー」改め「トリキ晩餐会」も2980円に引き上げられた。
「単純計算すると、6.4%の値上がりです。ただし、そのまま素直に客単価が上がるわけではないので、実際には4~5%ほど客単価が上がることが予想できます」(山崎氏)
鳥貴族の客単価は約2000円と、一般的な居酒屋チェーンの3000~4000円に比べて安い。この低価格が、若者などに支持される最大の理由だった。それが、値上げによって1回約130円の負担増になるわけだ。ただし、山崎氏は「この負担増だけなら、家計を圧迫することは考えにくい」と語る。
「あくまでも『ほかの居酒屋チェーンに行かず、鳥貴族だけを利用した場合』という限定的な条件になりますが、約130円の負担増なら、鳥貴族に行く回数を1回減らせば家計への影響はない計算になります。『飲みに行く回数を減らしたくない』という人でも、缶コーヒーを3本ぐらい我慢するなどの方法でやりくりが可能だと思います」(同)
ちなみに、鳥貴族は生ビールにサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」を提供しているのも売りのひとつで、中ジョッキの量は360ml前後だという。「どうしても値上げ分の負担増に耐えられない」という人は、コンビニなどで350mlのザ・プレミアム・モルツを200円で買って飲めば、多少は節約できることになる。
どうやら、鳥貴族の値上げによる家計への影響は限定的のようだ。むしろ、山崎氏は「鳥貴族の値上げを機に見直すべきなのは、飲み代そのものではなく、飲むことへの『満足度』なのでは」と指摘する。
「無駄な飲み会」を見直すきっかけに
この「満足度」とは、なんだろうか。たとえば、飲み会で2000円の料金を支払ったときに、その金額に見合った満足感を得ることができたかどうかである。
「つまり、『満足度』という観点のコストパフォーマンスです。支払い額に応じた満足感があったかどうかを自分に問いかける。もし、そこで疑問が生じたら、それは単に惰性で行っているだけかもしれません。今回のような値上げは、自分の生活スタイルを見直すきっかけになるのではないでしょうか」(同)