元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな税務署は「芝税務署」です。
国税局で税務調査に従事する職員のなかには、専門的な調査のみを担当している調査官がいます。国際税務専門官、開発特別調査官、銀行調査の情報から資料を作成する機動、IT取引に関する調査を専門に扱う情報技術専門官などで、規模の大きい税務署に配属されています。今回は近年、国税局が特に力を入れて税務調査を行っているインターネットを用いた取引、それを調査する情報技術専門官について、その調査手法や調査の多い業種を中心に解説します。
情報技術専門官は、すべての税務署にいるわけではありません。規模の大きい税務署に籍を置き、管轄の異なるエリアで調査をするときは、そのエリアの税務署と連携して調査を行います。情報技術専門官には、情報技術専門官付きの上席国税調査官や調査官がいて、2人で調査を行います。基本的に、準備調査や調査結果のまとめなどは、この「付き」が行うことになります。よって、籍を置く税務署と管轄の異なるエリアに調査を行う場合は、そのエリアの調査官が同行して、3人以上で臨場することもあります。
税務調査を受ける側は、調査側の人数が増えれば増えるほど、ミスや所得隠しを見つけられやすくなりますし、心理的ストレスも高まります。では、どんな場合に情報技術専門官の調査の対象となるのでしょうか。
・規模が大きく、社内独自のネットワークシステムが構築されている。
・電子商取引(電子的な情報通信によって商品やサービスを売買したり分配したりする取引。「eコマース」とも呼ばれる。ネットショッピングもこれに該当する)が多い。
・膨大なデータの収集が必要
基本的に、調査先に臨場し、調査対象者のパソコンを確認することで調査を進めていきます。棚卸しなどの膨大なデータを管理するファイルの削除履歴、役員給与などに関する議事録の作成日、取引先や社内の取引担当者とのメールの履歴などを確認し、不正の端緒とします。
また、インターネット取引を行う事業者は、会社員として本業を持っている場合や余暇を利用した主婦の方が多く、そもそも確定申告を怠る「無申告」であることが少なくありません。そのような無申告者を発見し、取引データなどの証拠を集めてから調査を行うのも、情報技術専門官の仕事です。