40年無申告でもバレない?
店主は「脱税して得たお金は、主に預金していた」と話しているとのことなので、納税は比較的容易にできるかもしれません。
脱税した理由については「外国人観光客の利用が増え、売上が急速に伸びたものの、忙しくて申告できなかった」と説明しているそうです。一方で、「家族でホソボソと営んでいて、申告の必要がないと思っていた」と、矛盾する発言も見られます。確定申告の必要性は理解していたが、40年間同じ場所で営業してきて、無申告を指摘されたことはなく、「どうせばれないだろう」と高を括っていたのかもしれません。
もし、この売店が40年間無申告だとして、「そのようなことがあるのか」と聞かれると、ズバリ「あります」。無申告が続くと、そのお店や会社の情報がほとんどないので、申告しているかいないのかわかりません。仮に、税務署の職員がそのたこ焼き店に行ったことがあるとしても、屋号しかなく、従業員の名前も店長の名前もわからず、会社名もわからないので、申告内容を照会することもできません。屋号と会社名が異なっていて、正しく申告しているケースが多いですし、店頭で「申告していますか」と聞くわけにもいきません。
このように、情報がまったく無い場合、その存在すら気づかずに、調査が行われないことがあるのです。
今回の調査がなぜ行われたのかはわかりませんが、求人広告や取引先の記録から存在が発覚することもありますし、あまりにも活況を呈していれば、熱心な調査官が不審に思い、該当者が見つかるまで申告状況を確認し、どんなに探しても見つからないので「もしや無申告なのでは」と考えて調査に着手した可能性もあります。遡及して調査できるのは7年までなので。すでに時効になってしまった分もあったかもしれませんが、今回の一件が同業者への牽制になり、正しい申告が増えることを願います。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)