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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

成人年齢18歳に引き下げ、カード発行やローンも可能に…誕生日直後を狙う業者に要注意

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

若年者に多い消費者トラブルとは?

 では、若年者にはどのような消費者トラブルが多いのだろうか?

 まず18~19歳については、男女でそれほど違いはなく、「アダルト情報サイト」や「テレビ放送サービス」「出会い系サイト」「デジタルコンテンツ」「賃貸アパート」などが上位を占める(図表2)。

 一方、20~22歳については、上位は18歳~19歳とほぼ同じ。ただ、男女でその内容は異なる。

 まず男性は「フリーローン・サラ金」が上位にあがり、「他の内職・副業」「教養娯楽教材」(主に投資用教材)など、投資や金儲けに関する相談が多いという。そして女性は「脱毛エステ」「痩身エステ」「美顔エステ」「エステティックサービス(全般)」「医療サービス(美容医療を含む)」といった美容に関するものが多い(図表3)。

 また、これらの商品・サービス等の購入形態別にみると、18~19歳では「通信販売」が男女とも6割超。次いで「店舗購入」は男性18.7%、女性23.1%、「訪問販売」は男性14.3%、女性11.3%と、この3つだけで9割以上を占める。20~22歳の場合、18~19歳と比較すると、上位3つの順位は同じだが、「通信販売」が約4割に減少。その分、「マルチ取引」の割合が増え、男性10.1%、女性4.5%と18歳~19歳の約5倍となっている。

 マルチ取引とは、まずは自分自身が商品やサービスを契約し、次は自分が買い手を探して、買い手が増えるごとにマージンが入る、いわゆる「ネズミ講式」の取引形態をいう。対象となる商品やサービスは、健康器具や化粧品、学習教材、出資などさまざま。ネットワークビジネスと称していることもある。

 若年者の消費者トラブルは、「スマートフォン」「SNS」がキーワード。スマートフォンならいつでもどこでも大量の情報を入手することができ、コミュニケーションツールとして多くの人が利用するSNSは手軽に、多種多様な人とつながることができる。この容易に多くの人とつながる手軽さや利便性が、マルチ取引のきっかけとして利用されることも少なくない。

 さらに注目すべきは、契約の相手方に実際に支払った金額が、20歳を境に大きく増える点だ。18~19歳は男性約15万円、女性約12万円に対し、20歳~22歳は男性約29万円、女性約17万円と男性の場合、2倍近い。

 未成年者はもちろんだが、20歳になり成人年齢に達したといっても、支払い能力がなければ、実質的に親が肩代わりすることになる。18歳といえば、そのほとんどが大学受験を控えた高校生。ただでさえ大学進学を控えてお金が必要な時期に、不要な出費が家計に与える影響は大きいはずだ。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

成人年齢18歳に引き下げ、カード発行やローンも可能に…誕生日直後を狙う業者に要注意の画像3【図表2】18歳~19歳の商品・役務別相談件数(上位15位)※出所:国民生活センター「若者の消費者トラブルの現状」(平成29年9月14日)(以下図表3同じ)
成人年齢18歳に引き下げ、カード発行やローンも可能に…誕生日直後を狙う業者に要注意の画像4【図表3】20歳~22歳の商品・役務別相談件数(上位15位)

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
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