立憲民主党と国民民主党の合流協議が難航している。1月20日に召集される通常国会までに結論が出るとみられてきたが、10日の党首会談で合意に至らず、会談後、立憲民主の枝野幸男代表は、「それぞれの党内協議に付すことで一致した」と語るにとどめた。相変わらずのグダグダに、「旧民主党以来の『決められない政治』が続いている」と揶揄される始末だ。
ここまで引っ張っている原因は、国民民主が立憲民主のスタンスを読み違えたことにある。立憲民主は「吸収合併」、国民民主は「対等合併」を主張しているとされるが、両党間には支持率で大きな差があり、立憲民主に国民民主が事実上吸収されるのは仕方がない状況。とはいえ、国民民主の玉木雄一郎代表は、新党ともいえるような緩やかな合流が可能で、党名も変更するものだと思っていた。
ところが、立憲民主は頑なだった。枝野氏は年明けの1月5日、島根県の出雲大社を参拝後、記者団に対し「新党をつくるつもりは100%ない」と明言。表立ってのこの発言は決定打だった。
枝野氏は昨年12月6日に国民民主や社民党に対し党の合併を呼びかけた際、「合流」や「吸収」などの言葉を避けて「立憲民主党とともに行動してほしい」という文言を使い、合流後の党名などに柔軟性があるのかと見られた。枝野氏が硬化したのには、立憲民主の“影のドン”の存在がある。
「立憲民主は枝野党。枝野さんが決めたことには福山哲郎幹事長以下、執行部でさえ誰も文句が言えない。2017年の総選挙で、小池百合子氏の『希望の党』から排除された人たちがつくった政党であり、あの時、枝野さんが立ち上がらなければ、現在所属する議員たちは救われていなかった。そんななかで枝野さんが唯一といっていいほど気を遣っているのが赤松広隆衆議院副議長。その赤松さんが強硬で、国民民主に対しては『こっちに入りたいのなら、頭下げたら入れてやる』みたいな考えなのです」(立憲民主関係者)
71歳の“ドン”に牛耳られる野党
赤松氏は、枝野氏が国民民主に合併を呼びかける直前の昨年11月下旬、自らが主催する政策グループ「サンクチュアリ」の会合で、党同士の統合に否定的な見解を示すこんな発言をしていたという。
「昔の民主党に戻るだけという批判を呼ぶようなことはすべきではない。初心を貫いて我が道を行くという枝野代表の本来の路線を維持すべきだ」
サンクチュアリは立憲民主の議員が約30人所属する党内最大の派閥といっていい。つまり立憲民主内の「国民民主、何するものぞ」という空気を代表しているのが赤松氏ということでもある。そして1月5日、地元名古屋の会合での年頭挨拶で、赤松氏はこう言って枝野氏に釘を刺し、国民民主をコケにした。
「この間も、枝野代表に言いました。忘れちゃいかん3つの原則があると。1つは立憲民主党という名前だけは絶対に変えちゃいかん。2つ目は基本の政策は絶対に変えちゃダメだ。3つ目は、代表は枝野でいいからその代わり、党が一緒になったから幹事長をよこせとか、政調会長、国対委員長をよこせとか言ってくるかもしれないが、骨格の人事は絶対に変えちゃダメだ。その3条件で党の合併協議はやりなさい。ただ、向こうも何もないとかわいそうですから、玉木も代表代行ぐらいで、ちょっと横に置くぐらいのかたちで最後は決着をつけたらどうかと、きつく言っておきました」
前述した枝野氏の「新党は100%ない」発言に、こうした赤松氏の姿勢が影響しているのは想像に難くない。
「両党の合併については、もともとは玉木さんが主張していて、枝野さんが長く難色を示していた。その枝野さんが『やろう』と呼びかけたのだから、今回はまとまると思ったし、支持者らもみな期待したと思う。『桜を見る会』の問題で安倍晋三首相の政治の私物化が極まり、秋元司衆議院議員が逮捕されたIR汚職で自民党の利権政治が浮き彫りになっている。内閣支持率が下がって国民も安倍政権に嫌気がさしてきているのに、結局野党がまとまれないのでは国民から呆れられてしまう」(国民民主関係者)
80歳の二階俊博自民党幹事長や79歳の麻生太郎財務相ら「老害」が目立つが、野党も71歳の人物に牛耳られているようでは、安倍政権は安泰、ということか。
(文=編集部)