1月に大阪・淀川河口付近に迷い込み注目の的となったマッコウクジラの「淀ちゃん」。同月に死亡し、紀伊水道沖まで船で運搬され投棄されたが、一連の投棄作業にかかった費用が8019万円だったと大阪市は発表。その高額な費用の妥当性をめぐって議論が起きている。
騒動となったクジラは1月9日、淀川河口付近に迷い込み、その理由について体力低下により海流に流されたともいわれたが、13日に死んだことが確認。淀川の河川敷に流れ着いた後、調査のため移動され、19日にはバージに乗せて大阪港から紀伊水道沖に運ばれ、コンクリートの重りを付けて海に投棄された。
その一連の死骸の撤去・投棄費用について大阪市は今月3日、8019万円だったと発表。死んだクジラは体長15メートル、体重38トンもあり、死後は周辺地域に強い異臭が漂い、体内にたまったガスにより爆発する恐れもあったため速やかに処理を行う必要があったものの、その高額な費用をめぐってSNS上では以下のようにさまざまな声があがっている。
<特殊だからって業者の言い値になってる>(原文ママ、以下同)
<特殊船舶を用いて爆発しないよう作業してたから妥当>
<クジラ送り続けるだけで 大阪財政破綻させられる>
<仕方ないよね こうするしかなかったんだから>
<実質爆弾処理みたいなもんやしな>
大阪港湾局「特殊な例」
費用の内訳について大阪市は、バージへのクジラの積み込み費用が約1300万円、紀伊水道沖への運搬費用などが約6500万円だったと説明しているが、元厚生労働官僚で神戸学院大学教授の中野雅至氏はいう。
「通常、自治体が民間企業に業務を発注する際にはコスト適正化のため競争入札を行うが、今回は緊急を要したため随意契約をしたのではないか。死んだクジラの処置については海に投棄する案と、地中に埋めて骨にしたうえで博物館などで保存する案もあったが、すぐに大きな土地を確保することは困難で、加えて異臭と爆発リスクの問題もあったため、急いで海へ投棄する案しか選択肢はなかった。特殊な作業ゆえに対応可能な業者も限られ、市としても複数の業者から相見積もりをとったり、費用が高いか安いかを議論している時間的な余裕はなかったため、仕方がなかった面が強い」
今回のバージ業者の選定過程について大阪港湾局はいう。
「緊急を要する業務については、通常の競争入札ではなく、大阪港湾局のほうで業者を選定し指示書というかたちで業務を依頼し、業者から請書を出していただくかたちで業務を請け負っていただきます。今回は大阪港について熟知し、港外までクジラの死骸を運ぶ船をお持ちの業者が一社しかなく、特命というかたちでお願いしました」
また、費用の見積もりについて大阪港湾局はいう。
「今回の運搬に使用されたバージは本来、砂利や砂などを運ぶものであり、クジラの死骸を乗せること自体が特殊な例となります。クジラを積み込んで安全に運搬するには(業者に)いろいろとご苦労があり、通常の運搬より高額となりました。安全に運搬するためにだいぶ気を使うため、そのあたりで費用が高くなりました。金額については、業者から提示いただいた見積もりに基づいております」
(文=Business Journal編集部、協力=中野雅至/神戸学院大学教授)