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山田修「戦略的ビジネス論」(4月25日)

学び合う孫正義と柳井正、経営の共通点と差異点 科学的なユニクロ、勝負のソフトバンク

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●「科学的経営」と「勝負の経営」

 孫氏は柳井氏が確立してきたファストリのビジネス・モデルを「科学的経営」と呼び、それを学びたいと思ったそうです。一方、柳井氏は孫氏の経営スタイルを「いつも勝負している」、つまりリスク・テイカ―として認識したと言っています。さらに他のベンチャー経営者と比べて「孫さんには志がある」と評価しました。

 孫氏の志の立てよう、持ちようは、確かに若い時から突出していました。20代でソフトバンクを創業した当時、社内でミカン箱の上に立ち、アルバイト社員たちに向かって「当社は将来、その売り上げを豆腐と同じように数える会社になる」と、演説したそうです。その心は、「丁=兆」ということでした。しかし、この演説を聞かされた当時の社員は感心するどころか、呆れて退社していってしまったそうです。

●企業は「経営資源」で階段を上がる

 柳井氏の志の立て方は、孫氏に比べると穏当というか、リアリスティックでした。地に足が着いていた、ともいえます。柳井氏は孫氏との対談で、次のように話しています。

「僕はまったく反対で、事業を始めたときは一生やってもせいぜい売上20、30億円、30店舗ぐらいと思っていました。ただし夢として、アメリカやヨーロッパの製造小売で何千億円企業がありましたから、できたらそうなりたいなという夢はありました」(「企業家倶楽部」<07年4月号/企業家ネットワーク>より)

 柳井氏の「夢と志」の話は、経営戦略論的におもしろい。というか現実的な設定と考えることができます。経営者が創業時に年商数千億円という戦略目標を設定したら、それは過大すぎて機能しないことのほうが圧倒的に多い。実際、柳井氏の「年商5兆円を目指す」という現時点での目標設定に至る変遷と、今に至るファストリの経営資源の獲得とは強い関連があります。それについては、前拙著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(山田修/ぱる出版)で詳細に論じました。

 一般的に経営者というのは、ヒト、モノ、カネ、情報などの、その企業独自の経営資源を獲得・追加することにより、業容拡大のチャンスを得ることができる。そして、階段を一段上がるような業容拡大を実現して企業としての次のステージに出ると、今度はそのステージから目指すにふさわしい「次の経営目標」を設定するのです。これが通常の戦略的プロセスを経た企業発展の過程ということなのです。

 それを考えると、柳井氏が喝破したように「孫さんは一種の天才」(前出の対談)といえるのでしょう。

学び合う孫正義と柳井正、経営の共通点と差異点 科学的なユニクロ、勝負のソフトバンクの画像3撮影=キタムラサキコ
●山田修(やまだ・おさむ)
経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第9期」が5月後半から開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長のロジカルマネジメント-私の方法』(講談社)ほか多数。 
「有限会社MBA経営 公式サイト」
http://senryaku.p1.bindsite.jp/
「山田修の戦略ブログ」
http://yamadaosamu.blogspot.com/

BusinessJournal編集部

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