コンビニコーヒー戦争に異変?ローソン、差別化戦略撤回でセブンに対抗、潜む2つの壁
ローソンとしては値下げしただけで販売量が増えなければ、深刻な売り上げ減につながりかねません。そのため、値下げによって大幅な販売数量のアップを実現させなければ、業界のリーダーであるセブンに追随する価格戦略は失敗に終わってしまいます。
実際にローソンはこの戦略の方針転換を決定する前に、特定の店舗でコーヒーを100円で実験販売し、売り上げ動向を検証しています。結果は、売り上げが6割も増加するという、予想を上回るものでした。この数値に自信を深めた結果、セブンに価格で対抗しても十分に勝算があると判断したのでしょう。
ただ、マーケティングの第一人者である米経営学者、フィリップ・コトラー氏の著書『競争上の地位に応じた戦略』では、市場におけるチャレンジャーの定石は差別化であり、リーダーと違う土俵で戦うことが成功要因とされています。経営体力に劣るチャレンジャーが正面切って市場のリーダーに戦いを挑んでも勝つ見込みは薄いため、リーダーが手掛けていない分野や製品に注力して、顧客を惹き付けていかなければならないというわけです。
これまでローソンはカウンターコーヒーにおいて、差別化されたプロダクト戦略で、リーダーとはわずかにターゲット顧客をずらしてセオリー通りの独自路線を歩んできました。ところが、ここにきて、リーダーとがっぷり四つで勝負することを決断したのです。
もちろん“宣戦布告”されたセブンも、指をくわえてローソンの戦いを見ているわけがありません。戦力に勝るリーダーの戦い方としては、値下げをしてチャレンジャーが追随できないレベルまで突き進むか、価格は同額でもクオリティを高めて、価値の面からチャレンジャーを圧倒的に引き離すことが考えられます。
そして実際にセブンは10月下旬、カウンターコーヒーをリニューアルすることを決定。新たに豆の渋皮を取り除くための独自の磨き工程を導入し、雑味のないすっきりとした味わいでありながら、同時に豆を深煎りすることでコク深いコーヒーを提供すると発表しました。しかも、価格は100円で据え置き。淹れ立てコーヒーをよりおいしくするために製造工程を追加し、コスト的には2割ほどアップするにもかかわらずです。このリニューアルでセブンは、コーヒーの価値を飛躍的に高め、ローソンの値下げに対抗する手段に打って出たのです。
ローソンにとっては、全力でマーケット支配を強化しようとする業界リーダー、セブンの大きな壁を越えなければ戦略的な成功はありえないといっても過言ではないのです。