アップルを部品納入企業が提訴 他社に技術漏洩させ発注先変更、不当な減額要求の疑い
上場企業は短期的利益を株主から追求されるが、かといって自社の利益を求めるあまりに、長期的に企業として大切にするべきことを忘れてはいけない。その大切さを改めて考えさせられる裁判ではないだろうか。
昔の日本企業は、自社の目先の利益を追うだけでなく、そのような長期的な視点の大切さをわかっている経営者の人が多かったのではないだろうか。日本企業は長期的な視点を大切にするために、株式持ち合いなどで短期利益目的の株主から圧力がかかりすぎないように体制をつくってきた。そして取引先にも「尊敬される」ほどの対応をしてきたという逸話も数多い。それゆえに日本企業の中には、財務諸表には表せない、取引先との特別に強い関係性を築いた会社もあった。
この大切さを説いて、何のために自分たちが働くのかを語った経営者の言葉に、以下のようなものがある。
「商売や生産は、その商店や製作所を繁栄させることにあらず、その働き、活動によって、社会を富ましめるところに、その目的がある」(パナソニック創業者・松下幸之助)
企業として何を大切にするべきか、考えさせられるニュースではないだろうか。
(文=福留憲治/ブランド・コア代表取締役)
※ご参照:松下幸之助の言葉に関する筆者のブログ記事はこちら。
『戦略論と現実の違い』
※本連載は、海外市場での市場調査やマーケティング・コンサルティングを行っている株式会社ブランド・コアの代表取締役・福留憲治が、コンサルタントの目線で考える事を書いているコラムです。本記事の詳細な図表や関連する過去記事は、筆者のブログ「とあるマーケ・コンサルの日記」をご参照ください。
●福留憲治(ふくどめ・けんじ)
一橋大学卒、アメリカの保険会社のマーケティング部に勤務したのち、アメリカの戦略系コンサルティングファームの一つであるアーサーアンダーセンで市場調査や分析を元にしたマーケティング・コンサルティングを担当。アメリカのコンサルティング手法の良し悪しを学んだ上で、日本の独立系マーケティングコンサルティング会社にも勤務しプロジェクト経験を積み、その後「株式会社ブランド・コア」を設立して代表取締役に就任。アメリカの「ブルームバーグ」や日本の「プレジデント」などでコメンテーターとしても活躍している。