努力しているのに、仕事がうまくいかないという経験は誰しもがあるはずだ。頑張りが必ずしも実を結ぶとは限らないが、上手くいかないからと頑張れば頑張るほど、悪い方向に向かってしまうこともある。そんな時、どのように解決すればいいのか。
その方法は、自分の脳のタイプを知り、そのタイプと反対のことをすることだ。
本書『思いつきで行動してしまう脳と考えすぎて行動できない脳』(菅原洋平/著、KADOKAWA/刊)では、リハビリテーションの現場で生まれた、長所を活かしつつ、脳の短所を利用し、脳のやる気を引きだす方法を解説している。
脳と心の動きや行動との関連を探る神経心理学の分野では、何かをするときにどういった行動をとるか、その物事への取り組み方によって、人間の脳を「同時系」と「継次系」という2つのタイプに分けている。
同時系の人は、良いアイデアをひらめき、すぐに行動に移すのが持ち味だが、空回ってしまうと、「思いつきで行動してしまった」ことで失敗することがある。
継次系の人は、現状を正確に把握して、滞りなくことを進めるのが持ち味だが、見通しが立たないと、「考えすぎて行動できず」に周りに先を越されてしまうことがある。
同時系は思いつきで行動してしまう脳、継次系は考えすぎて行動できない脳という側面があるのだ。
自分の弱点を目の当たりにすると、なんでうまくいかないのだろうと、悩んでしまうこともあるが、その「なんで」には、ちゃんとした理屈があり、原因は脳にある。脳の使い方さえ身につければ、自分の取り柄を活かしながら、自分の苦手とする仕事も上手にこなすことができるようになるのだ。
では、思いつきで行動してしまう同時系と、考えすぎて行動できない継次系の人は、どうすればうまく立ち回ることができるのか。その答えも著者は示してくれる。
まず、同時系の人は、意見を求められたときに聞かれたこと以外は答えないようにしよう。アイデアが豊富なことが、必ずしも物事を前進させるとは限らない。誰かに相談事をされたとき、他のアイデアを出して、相手の思考を振り出しに戻してしまうことがある。アイデアは思いもよらないこと同士が掛け合わされて生まれるが、生まれればそれで良いわけではない。まして、相手はこちらに相談しているのだから、新しいアイデアを投げかければ、相手は混乱してしまう。このコミュニケーションのギャップに気付かないと、頑張るほど相手は混乱することになってしまう。なので、相手から相談されたときは、最期の一文まで待って、最後の一文に対して回答するようにするのがいい。
継次系の人が、考えすぎて行動できなくなってしまうのを防ぐには、日常生活の中で、あえて小さな「エラーを起こす」のがポイントだ。とにかく「順番通りわかりやすい」ことが最重要である継次系の人にとって、予想外のことが起こるとストレスを感じるかもしれない。しかし、自分のルールに当てはめることばかりを重要視していると、現状をなかなか変えられなく行き詰ってしまうという。