将来に対する漠然とした不安や、日常生活のストレス、心配事などに邪魔されて、私たちの頭の中はなかなかスッキリすることがありません。
こういったモヤモヤや憂うつを軽くする方法はないのでしょうか。
精神科医・医学博士の西多昌規さんは、モヤモヤ・憂うつについて、「憂うつは大きな反発力を生む」といい、何かに取り組む糧となるという意味では必要なものだとしています。しかし、同時にそれがあまりに強いと健康ではない、とも。
『脳がスッキリする技術』(宝島社/刊)は同氏が、憂うつを少しでもはね返し、軽減させるための考え方や工夫について解説した一冊。今回はその方法の一部を紹介します。
■自分の欲を認識する
西多さんは、脳をスッキリさせるための近道として「自分の欲望をきちんと認識すること」を挙げています。
欲望といっても多種多様です。バブル期のように「ブランド物の服が欲しい」「高級外車に乗りたい」といったものもあれば、「ストレスなく暮らしたい」「働かずに暮らしたい」といったものもあります。
これらを抑圧したり、気づかないふりをしているとモヤモヤの原因になります。きちんと受け入れて、その欲望を少しだけ実行に移せば、「スッキリ」に近づけるはずです。
■「怒ってスッキリ」は一時的なもの
「言いたいことを言ったら気持ちがスッキリした」という経験を持っている人は多いでしょう。確かに、怒りや葛藤など、心の中に溜めておいた感情を吐き出すと苦しみはやわらぎ、気持ちが落ち着きます。
ただし、感情を吐き出せばいいというものではありません。怒りや不満をところ構わず爆発させてしまうと、当然ながら職場でも家庭でも孤立してしまいますし、そもそも感情を爆発させてスッキリするという方法の効果は一時的なものなのです。
スッキリした状態を長続きさせたいなら、まず物事の受け入れ方を変え、怒りや不満を溜めにくくする必要があります。
西多さんは、その方法として「自分と相手はわかりあえない」という前提を持って人と接することを挙げています。そうすることで、相手に過度に期待することがなくなるため、怒りや不満を感じにくくなるのです。
■サボることに罪悪感を持たない
課された仕事をきちんとこなすことは、仕事では基本中の基本で、これができないようでは評価や信頼は落ちてしまいます。しかし、あまり正直に与えられた仕事を全てこなそうとしていると、自分への負荷がどんどん大きくなってしまいます。これでは「スッキリ」した状態からは程遠いだけでなく、積み重なると心身の病気の原因にもなります。
そうならないために、常に全力投球ではなく緩急をつけて上手に「サボる」ことは、今や生きていくうえで重要なスキルなのかもしれません。
「サボる」というとネガティブなイメージがありますが、その時間は戦略的に充電していると前向きにとらえることも必要です。
心配事やストレス、不満を感じるのは現代に生きる人間の宿命ともいえ、完全に取り除くことはできないのかもしれません。ただ、考え方を変えたり工夫することで軽減させることはできるので、毎日がうっ屈している人や、日々の生活に楽しみを見いだせない人は、本書で取り上げられているやり方を取り入れてみるといいかもしれません。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです