国内生命保険2位の日本生命が同8位の三井生命の買収に向けて交渉に入った。この買収が実現すれば、2004年の明治安田生命の発足以来の大型買収になると注目を集めている。
2015年は「業界再編時代」の幕開けといわれ、様々な業界で再編や提携の動きが起きている。例えば、ゲーム業界における任天堂とDeNAの資本提携。コンビニ業界でのファミリーマートとユニー・グループ・ホールディングス(サークルKサンクス)との経営統合の交渉も記憶に新しい。
なぜこれほどまでに再編や提携の動きが活発になっているのだろうか。この疑問に答えてくれるのが『「業界再編時代」のM&A戦略 No.1コンサルタントが導く「勝者の選択」』(渡部恒郎(わたなべつねお)/著、幻冬舎/刊)だ。
業界再編とは、ある業種・業界で強い企業やオーナー経営者が集まって「強者連合」をつくり、業界構造を変え、新しいビジネスに挑戦し、業界の勢力図を変えていくこと。企業の淘汰や統合を繰り返し、日本経済の原動力となってきた。本書では以下の3点を業界再編活発化の背景として挙げ、この傾向は今後も続くと予測している。
1.人口減少の影響を乗り越える必要がある
労働力の人口が減少する中では、企業同士がより連携し、協力しながら前に進むのがベスト。労働力が少なくなると、採用活動では優秀な人材を確保するには大企業が有利となる。今後、中小企業にとっては、大企業との連携がキーワードになる。
2.多くの業界が「成熟期」を迎えつつある
日本の多くの産業は成熟期であり、「次なる業界のビジョン」をかかげるために業種の枠を超えた再編を行い、局面の打開を試みるケースが増えていくと考えられる。
例えば、食品製造業。日本酒を製造する酒蔵の多くは、国内消費量の減少に頭を悩ませているが、有名酒蔵が居酒屋チェーンとM&Aを行ったときに店頭に「大量生産のものではなく、個性ある酒蔵の日本酒を置いた」ところ、大変評判になった。
3.ITシステム構築の必要性が増している
インターネットの普及はあらゆる業界に影響を与えている。これからはIT化を通じてシェアを伸ばし、顧客情報を獲得することが可能であり、データベースを整備して新しいビジネスを打ち出すこともできる。より充実したITシステム構築のために、企業の連携・提携が求められている。
産業は、導入期、成長期、成熟期、衰退期という4つのライフサイクルを経る。
どの業界でも、上位企業のシェアが約10%になると「成長期」に入り、業界再編が始まる。この段階では中堅企業や大企業による中小企業の買収、中小・中堅企業のグループ化が行われる。さらに産業が成長し、上位10社のシェアが約50%に達して「成熟期」になると、大企業が中堅企業を買収するようになり、業界再編はピークを迎える。そして迎える「衰退期」では、上位10社のシェアが約70%まで進み、大手10社の統合が始まるという。