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クリエイティブに必要なのは高いIQではない! 脳科学を通して理解する「人間」という存在

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※画像:『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』(誠文堂新光社刊)

 4月になり、就職や転職、部署異動や転勤など環境が大きく変わったという人も少なくないだろう。また、心機一転、この春から自分を変えたいと思って、何か動き出そうとしている人もいるはずだ。


 気持ちの切り替えをするには、タイミングが大事。そのタイミングとしてうってつけなのが、「新年度」である。


 もし、この春から教養を学び直したいと思うならば、ぜひ挑戦してみてほしい一冊がある。『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる』(羽根由、枇谷玲子訳、誠文堂新光社刊)だ。


 本書はノルウェーの神経学専門医であるカーヤ・ノーデンゲン氏が、「なぜ人類は繁栄できたのか」というテーマについて、脳・神経科学の切り口から分析していく一冊。哲学や進化学、人類学に至るさまざまな学問分野を横断しながら、人間とは何かを教えてくれる。


 当たり前に私たちは考え、話し、創造する。しかし、そうした行動を通して文化を作れるのは、私たち人間しかいない。複雑な構造の脳を持つ私たちだからこそ、この社会を築いてきた。その脳の奥深い世界を、本書から少しのぞいてみよう。

 

■人間はなぜ文明社会を築き上げることができたのか?


 動物は基本的に「本能の奴隷」とも言える。目の前にあるのは「今」という時間だけだ。一方、人間はそうではない。現在だけではなく、過去と未来という時間感覚を持っている。


 この文明社会を築き上げてきたのは、まぎれもなく人間だ。その背景にあるのは「協働」である。一人で動くのではなく、複数の脳が寄り合い、アイデアを出し、コミュニケーションを取り、自分の知識や技術を教え合ってきた。「思考と言葉を互いに交換することで、私たちは本能の奴隷にならずにすむようになりました」と著者はつづる。


 さらに、他者と協働していくには、他者理解が必要だ。つまり「共感」である。そこでは、人間の大脳皮質にある特別な神経細胞が役立っていると脳科学者たちは言う。その特別な神経細胞は、「ミラーニューロン」と呼ばれている。


 人間たちは脳を進化させ、共感し、協働しながら、強くなってきたのだ。

 

■容姿と知能の相関関係はある? ない?


 IQ(知能指数)は頭の良し悪しを計る数値として、センセーショナルに使われることがある。とはいえ、IQテストの成績がよくても記憶力が高いとは限らないし、友人、親、配偶者としてふさわしいとも限らない。一方で平均的なIQで億万長者になった人もいるはずだ。


 もちろん、そうしたギャップが見受けられるとしても、IQの高さがよい仕事につき、よい給料をもらう傾向があると著者は説明する。 そこまでは想像できる。ただ、それだけではない。


 容姿と知能の高さの関係に相関があるとすれば――あなたはどう思うか?


 イギリスでは、1万7000人の子どもに対して、1995年から2011年にわたり知能テストを受けさせ、なおかつ互いに全く関係のない複数の教師が、被験者の容姿を評価するという調査が行われた。その結果、肉体的に魅力的であることと、知的であることは相関関係があったという。


 さらにこの研究はアメリカでも2万人の若者を対象に8年間にわたって行われており、同様の相関関係が分かっている。


 この調査が示されて以降、相関関係の論拠をさまざまな研究者が探してきた。知能と容姿は心身の健やかさのあらわれと言う人もいれば、長年の自然選択の結果である――つまり、遺伝的な要素だと言う研究者もいるという。

 

■クリエイティブな脳を作るために必要なのは高いIQではない


 しかし、その一方で、新しい何かを作る「クリエイティブ」の能力は、高いIQをマークする必要はないとも著者は言う。平均的な人間の脳を備えていれば十分だ。


 クリエイティブな脳になるには、明らかに役に立ちそうではない印象や記憶をも受けとめる必要がある。これらは、互いに関連のないもの同士を結び付けていくことに役立つという。


 想像力は人間の特権である。今に至るまで、人々は物語や民話をつむぎ、それをその時に応じてアレンジし、理解をして、想像力を膨らませてきた。


 「自分はIQが低い」と思っていても大丈夫。文化がもたらす本や芸術、建築、そして他者との交流の中で刺激を受けることが、あなたを成長へと向かわせるのだ。


 本書では、日常のちょっとした出来事などを使って脳や人間を科学的に説明する、知的好奇心をかきたてる一冊だ。


 「記憶」「思考」「パーソナリティ」「味覚/感覚」「脳と薬物」など、触れている話題は幅広い。脳の世界を知ることができれば人間の持つ可能性を、そして自分自身の持つ可能性を感じることができるはずだ。
(新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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