頭で考えていることや持っている情報を、いざ文章にして相手に伝えようとすると、なかなかうまく伝わらない。それで結局、
「えーっと、あれなんだっけなあ、あれなんですよね、あれ」
と考えたまま、まとまらずにチャンスを逃してしまう。学生も社会人も、レポートや企画書など、「文章で伝える」機会は必ずあるもの。どうしたらわかりやすく伝えることができるのか。
■5W1Hの「Why」の深さは一体どのくらい?
一から日本語の勉強をしたいならば、この本は基礎から教えてくれる。
『日本語の<書き>方』(森山卓郎著、岩波書店刊)である。
言葉から、文字の使い方、語彙の選び方、文の組み立て方、段落の構成法、と順を追って、日本語のしくみを知り、「書く」ための基礎を習得することができる。
例えば、レポートや報告文を書くときは、
いつ「When」
どこで「Where」
だれが「Who」
何を「What」
なぜ「Why」
どのように「How」
この5W1Hが必須要素といわれている。
しかし、これだけで十分というわけではない。「なぜ」は大切だが、「なぜ」には深さがある。原因の奥にさらに原因がある場合があり、時としてその原因が複合的な場合もある。「なぜ」には突きとめていく余地があるということだ。
■伝える相手が誰かを想像しないと文章は書けない。
もう1つ、5W1Hには、抜けているものがあるという。それは、「伝える相手」は誰で、その人は何を知っているのか、何を知りたがっているのか、という問題だ。
いくらそれぞれの要素が記されていても、伝える相手にとってまったく意味のない情報である場合は、その情報は十分なものとは言えない。情報が単にあればいいのではなくて、その情報はその受け手にとって意味のあるものでなければならない。だから、必要に応じて、その情報性や背景なども相手に伝えることが必要になる。こう著者は指摘するのだ。
また、情報を伝えるとき、書き手がどのような立場で書いているかということも大事である。ある一つの事柄について、中立的な述べ方もできれば、自分の捉え方を反映させた述べ方もできるのだ。
■数字も前後の言葉を変えることによって印象が変わる。
これは数字を出す場合も同様だと著者は言う。同じ数字でも「○○人もの~」と言うのか「わずか○○人の~」と言うのかによって、立場があらわれる。
そこで森山氏は、まず書き手の捉え方をどの程度反映させる文章なのか、ということを考えた上で、その捉え方で文章を書くのであれば、その捉え方を一貫させるようにすることをすすめる。
これは意見を述べるときなどにおいて、とても大切なことである。
本書はこうした文章における大切な基礎を教えてくれる。報告文や手紙、論説文など、それぞれの文章の書き方の基本を知ることで、相手に伝わる文章が書けるようになるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。