近年、外国人観光客の数が右肩上がりに増加している。実際、東京や大阪、観光地で外国人観光客の多さを実感している人は多いだろう。
訪日外国人の宿泊数を都道府県別にみると、現状では東京・大阪・京都・北海道・沖縄など上位10県で約80%を占めているが、今後は訪日リピーターの増加とネットをはじめとした旅行情報の増加により、さまざま地域に分散していくことになる。
このチャンスを逃さないために、ホテルや旅館、飲食店は、どのように集客したらいいのだろうか。
『外国人観光客を呼び込む方法』(小野秀一郎著、日本実業出版社刊)では、“インバウンドの仕掛人”小野秀一郎氏が、外国人に満足してもらえる旅館やホテル、飲食店、観光地であり続け、継続してインバウンド(訪日外国人旅行者市場)で収益を上げられるような本当の集客力を身に付ける術を紹介する。
■団体から個人客のシフトで成功! 体験を共有する事例
本書では、小野氏が実際に関わってきた事例を中心に、宿泊施設や飲食店のインバウンドへの取り組みの実例を挙げている。
1つ目は、南九州の鹿児島県霧島にある客室110室の大規模ホテルだ。
このホテルでは、5年ほど前から中国や台湾からの団体客を集客していた。しかし、単価が安定せず、継続的に団体客に来てもらっても収益確保が難しいと思われたため、個人客を呼び込もうと考えた。その足掛かりとして、日本語サイトをベースとした英語・中国語、韓国語版の多言語サイトを立ち上げ、同時に海外OTA(オンライン・トラベル・エージェント、海外発祥の予約サイト)にも加盟。今ではコンスタントにほぼ毎日3組ほどの個人旅行者の予約が入るようになった。
その成功要因は、霧島温泉の中でいち早く団体客への依存から脱却し、スマートフォンやタブレットを片手に旅をしながら体験を即SNSにアップするような旅行者の集客へシフトしたこと、英語だけでなくアジア言語のサイトを立ち上げたこと、海外OTAの予約エンジンを搭載して、外国人ユーザーがリアルタイムで空き状況と料金を確認できるようにしたこと、などが挙げられるという。
■温泉全体で英語にフォーカスして成功 城崎温泉の戦略
もう1つは、温泉全体の外国人旅行者の集客成功事例。兵庫県の北部にある城崎温泉だ。近畿でも有数の温泉地だが、少子化と景気の影響で来客数は減少傾向にあった。そこで最初に取り組んだのは、多言語サイトの製作と英語研修といった基本的なことだったそうだ。
そのポイントは、やはり多言語サイトを開設し、その上で注力する言語を英語に絞り込む、ネットFIT(個人の旅行者)にターゲットを絞り込むなどをしたこと。その結果、城崎温泉を訪問した欧米人による口コミが英語を話せるアジア圏の若者層を中心としたネットFITにも普及し、最近では香港、台湾、中国などのアジア圏からの来訪が顕著になった。
外国人に対する接客も大切だが、まずは集客すること。いくら外国人旅行者が増えているといっても、待っているだけではお客は増えない。常に海外事情やネット活用の探求をすることを怠ってはいけない。好調の訪日外国人旅行者市場だが、今後、景気悪化や円高、天災など、逆境になる可能性もある。そんな時でも変わらぬ集客力を今のうちから付けておくことが重要だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。