日本は「おもてなし大国」と呼ばれ、海外と比べて優れたホスピタリティを有するといわれている。我々の日常でそのような接客・接遇を感じることができる場といえば、百貨店が挙げられるだろう。
安売りが目玉のスーパーなどとは違い、百貨店では確かな品質を備えたさまざまな商品を専門の販売員が案内する。また、同じ商品がほかで安く買えるとしても、アフターサービスなど信頼を重視して百貨店に足を運ぶ人も多い。その分、店員には高度な接客が求められるが、なかには百貨店とは思えないような横柄な態度をとる店員もいるという。
「私や友人もよく高島屋を利用させてもらいますが、商品は確かなものだし、店員さんの対応にも満足することがほとんどです。でも、稀にガッカリさせられるようなこともあります。例えば、こちらの服装によって態度を変えてくる店員さん。たまたまジーパンにパーカーといったラフな格好の時に店員さんに声を掛けたら、笑顔もなく『ハイハイ』と適当な対応をされて『あれ?』と思いました。また別の日に用事があってその店に行った時にも同じ店員さんに接客されましたが、その日はスーツを着ていたからかヘコヘコと話し掛けてきて。前の対応を覚えていただけに不快でした」(都内に住む20代女性)
インターネットにも似たような不満は多く寄せられていて、「商品に傷があったから返品しようとしたら、店の非を認めず客の落ち度と言い張られた」「何も買わずに去ろうとすると、嫌な顔をされた」などの書き込みもみられたが、やはり服装や見た目で店員から「差別された」と感じる客が少なくない様子。
新人をイジめるベテラン店員
これについて、実際に東京・新宿の某百貨店で勤務経験のある女性は、次のように語った。
「お客様に対して見た目で態度を変えるなんて接客にあるまじきことですが、こういう話を聞くと『やっぱりな』と思うことがあります。私が働いていた百貨店では、従業員間でも同じことが起きていたからです。私は新人の時に、あるベテラン社員から『こんなこともできないの?』『何もできないのになんで採用されたの?』と、笑いながら暴言を吐かれました。そこに配属されてたった3日目のことだったから、すごく驚いたし悲しかったです。結局、私はすぐ異動になったけれど、今度はその後に入った女の子が同じ社員からしつこく個人情報を聞かれて困り、辞めたと聞きました。こうやって、自分と同じ従業員に対してもパワハラやセクハラをする人間がいるのだから、お客様に失礼な態度をとる店員がいてもおかしくないと思います」
近年、百貨店は競争相手の増加や若者離れなどさまざまな原因で苦戦を強いられている。しかし、いくら商品の質を謳っても、接客態度が悪くては客足が遠のく一方だろう。当然、それはすべての接客業にいえることだが、特に百貨店には「高くても行きたい」と思わせる付加価値が必要だ。まずは従業員間のハラスメントをなくして環境を改善しなければ、真のおもてなしなど提供できないのではないだろうか。
(文=編集部)