東京オリンピックの招致に成功して以来「おもてなし」が注目されている。
デパートや飲食店、ホテルなどでは「おもてなし」をウリにし、どこでも「おもてなし」のオンパレードになっているが、それだけで売上げを伸ばすのはなかなか困難な状況ではある。
■自然と売り上げが上がる神対応
こうした状況下、「おもてなし」で驚異的な売上げを立てた販売員がいた。『神対応のおもてなし』(神宮館刊)の著者、茂木久美子さんだ。
茂木さんは山形新幹線の車内販売をしていたときに、1往復の平均売上げが7~8万円のところ、片道だけで57万円を達成した。これは東京都内のコンビニの丸一日分の平均売上げに相当する。
茂木さんの接客は、他の販売員と何が違っているのか。象徴的な例として挙げられるのが、お客様から代金を受け取るときの心がまえである。
茂木さんはお客様から硬貨を受け取るとき、必ずその温度を手のひらで確認する。そして「温かいな」と感じたら「ずいぶんお待ちいただいたのですね」と言葉をかけるのだ。
多くの販売員が機械的に「ありがとうございます」とだけ言って終わらせてしまうお会計での対応。しかし、そこでプラスアルファを加えるところに売上げ10倍の秘密が隠されている。
■「おもてなし」と「サービス」の使い分けでお客様を満足させる神対応
茂木さんは接客や販売向けの研修会で必ず「おもてなしとサービスは違う」と教える。
この2つの違いがわからず、「おもてなし」を「サービス」とはき違えている販売員が多いのだという。
その違いは「おもてなし」はお客様に心を伝えることであり、見返りを求めないこと。一方「サービス」はお金をかけて、おまけをつけたり安くすること。
つまり計画的な対応よりも、見返りを求めない対応の方がお客様もうれしさを感じるのである。
■目先の売り上げではなく、将来の売上げに繋げる神対応
もうひとつ、良い意味で型にはまらない茂木さんの接客例を紹介しよう。それは、赤ちゃんを抱いた母親がお弁当を注文してきたときのこと。
茂木さんはこの注文を受けたとき、「サンドイッチなら片手でも食べやすいですよ」と提案した。というのも、赤ちゃんを片手で抱えたまま、箸でお弁当を食べる母親の姿を想像できなかったからだという。
親身になって考え、「この提案なら喜んでもらえるはず」と思うことなら、ときにはお客様からの注文をひっくり返すというわけだ。
お弁当は1,000円、サンドイッチは500円なので、売上げは半分になってしまう。しかし、目先の売上げを優先せず、あくまで「お客様のため」になることを徹底することにより、長期的には売上げを伸ばすことができたという。
■ピンチをチャンスに変える神対応
ところで販売員にとって、最も難しいことの一つが、子連れ客にアイスクリームを売ることだという。