厚生労働省が5月に発表した2015年の人口動態調査では、合計特殊出生率が1.46となり、2年ぶりに増加に転じた。生まれた子供の数も100万人の大台をキープしている。出生率が1.46にまで回復したことは、明るいニュースとして大々的に報道されたが、これで少子化に歯止めがかかったわけではない。
すでに日本の人口は減少に転じており、少子化は多くの業界に打撃を与えている。ところが、少子化の影響をモロに受けている思われる玩具業界は、まったく事情が異なる。
玩具業界内でも少子化への危機感は広がっていた。実際、ほかの業界と同様に12年まで玩具業界の市場規模は右肩下がりを続けた。しかし、そこに神風が吹く。それが、社会現象にもなった「妖怪ウォッチ」の爆発的ブームだ。
14年は空前の「妖怪ウォッチ」ブームが巻き起こっただけではなく、ウォルト・ディズニーのアニメ映画『アナと雪の女王』も大ヒットした。妖怪ウォッチとアナ雪によって、玩具業界は一気に売り上げを回復。そして、市場規模は史上最高の8000億円超を記録した。
しかし、妖怪ウォッチブームは長く続かなかった。業界関係者たちもブームの終焉は折り込み済みで、翌年は反動減を恐れていた。ふたを開けてみればブームが去った15年の売上は前年度比で見れば99パーセントと下がったものの、玩具業界全体の市場規模は8000億円の大台をキープした。
それどころか、玩具業界で主要とされる10分野(ゲーム<テレビゲーム関連は除く>、カードゲーム、ジグソーパズル、ハイテク系トレンドトイ、男児キャラクター、男児玩具、女児玩具、ぬいぐるみ、知育・教育<ベビーカー・チャイルドシート・三輪車などの乗用関連は除く>、季節商品)では前年度比102.2パーセントに増加している。
妖怪ウォッチやアナ雪といった“売れるコンテンツ”に依存していた年よりも、玩具市場には追い風が吹いている。つまり、爆発的なヒット商品がなくても、市場規模の拡大が可能であることを示したといえるだろう。
玩具市場が縮小しない理由
では、妖怪ウォッチやアナ雪のブームが去っても、玩具業界の売上が激減しなかった理由はどこにあるのだろうか。日本玩具協会は、その理由をトレーディングカードゲーム人気が復活したことだと分析している。しかし、それだけで妖怪ウォッチとアナの穴は埋めることはできない。業界関係者は、こう分析する。