終身雇用制度はもう風前の灯火。これからはさらに人材の流動性は高まり、新卒で入社した会社で定年まで勤め上げる人はどんどん減っていくのは間違いない。
そこで大事になるのが、若いうちから自分のキャリアを長期的・戦略的に考えておくこと。今いる会社で与えられた仕事をこなしていれば人材としての価値が上がるわけでもないし、やみくもに転職を繰り返せば年収が上がっていくわけでもない。
「転職市場は出来レース」
そう語るのは『キャリアロジック 誰でも年収1000万円を超えるための28のルール』(実業之日本社刊)の著者で、転職ノウハウメディア「すべらない転職」を運営し、転職エージェントとして長い経験を持つアクシス株式会社・代表の末永雄大氏だ。これから転職しようとしている人にとっては不穏な言葉だが、これはどういう意味なのだろうか。
■転職エージェントが語る「転職市場は出来レース」の真意
「人生は何歳からでもやり直せる」という言葉は、決して間違ってはいない。ただし、この言葉がかならずしも通用しないのが転職の世界。キャリアにおける評価では、年齢は大きく影響する。
転職を考えるからには、年収面でも仕事の内容面でも「今よりもいい条件の職場を」と考えるのは当然だ。だが、転職市場では現時点での年齢と経験によって、対象となる求人とオファーされる年収はほぼ決まっているという。この事実を知らずに転職活動をしてしまうと、むやみに高望みして希望の求人に出合えないということになってしまう。
また、未経験からの転職で年収アップは望み薄だし、そもそも未経験ではエントリーできない求人もある。これが「転職市場は出来レース」の真意。だからこそ、若いうちから「何歳までにどんな仕事でどんな経験を積む」というプランが必要なのだ。
■転職で「学歴」と「資格」は必要か
一方で、転職において「学歴」や「資格」はほとんど関係がない。
転職で学歴が関係してくるのは営業系、コンサルタント、総合職・第二新卒枠などの「未経験歓迎」の求人のみ。こういう求人では「地頭のいい人を採用したい」という採用企業が、書類選考で学歴を一つの指標にしているケースだという。
ただ、それであっても学歴が有利にはたらくのは書類選考まで。その後の面接での評価の比重の方が高いため、学歴が採用の可否に直接かかわるとまではいえない。
また、「何かと有利」という思いから手当たり次第に取りまくる人が少なくない「資格」だが、これも転職で役立つかは「ものによる」というのが実情のようだ。
そもそも資格といっても幅広い。本書によると、資格は
・実務に有利になる資格
・保持していなければ実務ができない資格
・英語など語学力を評価するための資格
・意味がない、もしくは意欲を伝える程度の資格
の4つに大別できる。
経理職であれば、簿記2級資格があれば実務に役立つ。こういう資格であれば転職に大いに役立つだろう。税理士や弁護士、医師など保持していなければ仕事ができない資格も同様だ。
問題は語学の資格。英語ならTOEICやTOFULで高得点を取っておけば外資系企業の転職で有利なように思えるが、現実は前職でのビジネス英語の実務経験が必須というケースが多いという。
ただ、これら3種類を合わせても、資格という広い海の中ではごく少数派だろう。残りはすべて「意味がない、もしくは意欲を伝える程度の資格」だ。一部を除いて、資格は転職には役立たないと考えておいた方がいい。
転職で評価されるのは学歴でも資格でもない。問われるのは、どんな業界のどんな職種で何年の経験があるかという「実務経験」なのだ。
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では、何より重視される「実務経験」をどう積んでいくか。
これが自分のキャリアを考えるうえでの核になる。本書では、効果的に自分の人材価値を高める実務経験を積んでいくための戦略と知見が、転職市場の専門家の目から鋭く語られている。
キャリアを実りあるものにするかどうかは自分の戦略と決断次第。現状に満足できない人。もっと年収を増やしたい人。ビジネスの世界で成功を収めたい人は、一読してみると学べるものが多いはずだ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。