日本は「健康寿命が世界トップクラス」の国である。
これはすなわち、20代~40代で積んだビジネス経験を活かし、セカンドキャリアとして花開かせるための時間的猶予が長くなったことを意味する。
であれば、「上の世代はもっと悠々自適な老後を過ごせていたのに…」と嘆くより、老後も働きつづけるという選択に向け、できるだけ早いうちから自分の強みを発揮するためのセカンドキャリアを着実に作っていくほうが建設的だ。
■元ソニー社員が起業のために考え抜いた4年間の全貌
では実際、どのように自分の強みを発揮できるセカンドキャリアを作ればいいのか。
そこであがってくるのが「起業」という選択肢だ。自分のやりたいことをビジネスにして、社会に寄与する。ビジネスマンの一つの到達点といえよう。 しかし、起業にはリスクがつきもの。成長し続け、儲け続けることのできる会社を作らなければいけない。
そこで参考になるのが、『事業に失敗しないための 起業家宣言』(こう書房刊)の著者である小室雄次さんのケースだ。
小室さんは、29年間勤めたソニーマーケティングを51歳で退職。小樽商科大学大学院アントレプレナーシップ専攻に入学し、2年間でMBA理論を習得し、53歳のときに起業。社内事業として立ち上げた太陽光発電事業「サンエコ北海道」の2016年度における累計売上高は20億円間近にまで成長を遂げている。
つまり彼は、起業という形で「儲かるセカンドキャリア」を実現させたわけである。
そして本書を読むと、この成功が、50歳までソニーにいたときの経験の蓄積と4年間という長い準備期間に裏打ちされていることが分かる。(「シニア起業家の開業準備期間は平均6.1ヶ月」(※)というデータがあり、それと比較しても長い時間を準備したことがわかるだろう)
■53歳でのMBA理論習得がもたらした効果
では、小室さんはその4年間をどのように過ごしたのか。
本書によれば、最初の1年で独立を考えはじめ、次の2年間でMBAを学び、最後の1年でじっくりと時間をかけてビジネスプランを練り上げていったという。
ここで注目したいのは、MBAの取得前後で、彼のなかにどのような「変化」や「手ごたえ」が生まれていったかという点だ。
小室さんいわく、創業のビジネスアイデアを選定するにあたって決定的に重要なのは、「自己実現の目的を明らかにする」「自分の強みを活かす」「市場が求めているものを探し出す」という3つのプロセス。
そして彼の場合、特に最初の二点において、MBAを学んだことが功を奏した。
まず、「自己実現の目的を明らかにする」についてだが、MBAで学ぶ経営理論とソニーでの経験を融合させていくうち、小室さんのなかで、「地元である北海道の経済に貢献したい」という起業の目的がクリアになっていった。
実地経験と理論との両方を兼ね備えたスキルを活用することで、次世代の営業マンを育てたり、地元企業の活性化サポートができることに気づいていったわけだ。
また、もうひとつ大きかったのは、「自分の強みを活かす」についても、MBAでの学びが機能したこと。