たとえば、竹花氏によると、営業先にインターンを同行させるのは就業体験の範囲内といえるが、営業としてクライアントを1人で接客するなど、会社の利益につながるような行動を単独で行わせるケースは「アウト」だという。
「そもそも、よほど資本力のある大企業でない限り、純粋に社会貢献の一環としてインターンを受け入れるのは無理があります。さらに、参加した学生を採用することもできないとなれば、企業側にとってメリットが薄すぎる。
このため、最近では自主的にインターンに給与を支払う企業が多数派になっています。とはいえ、コンプライアンス意識の低い企業も依然存在するので、なかには給与を支払わないで社員と同じ仕事をさせるケースもあるようです」(同)
企業に搾取され泣き寝入りする学生も
そして、より問題なのは、明らかにインターンに労働をさせているケースでも、立場の弱い学生側が異議を申し立てづらいという点である。実際、社員と同様の労働をさせられたのに給与を出してもらえず、学生が泣き寝入りするケースもあるという。
「まだ法廷で争う例こそありませんが、『企業に搾取されている』という意味では、インターンも“ブラックバイト”と共通の問題点があります」(同)
竹花氏は、そうならないために「働いた時間や業務内容を記録しておくこと」「労働時間を確定しておくこと」の2点が重要だと語る。「インターン」という名目であっても、働いた時間の給与は請求できるが、これを知らない人が意外に多いという。
「これから社会に出て働くからには、労働法は絶対に知っていたほうがいいと思います。たとえば、弁護士会でも学生に労働法を教える無料の出張講義を積極的に行うようになっているので、学校がそうした制度を利用するのも有効です」(同)
企業にも学生にもメリットがないインターン制度
学生側だけではなく、インターンを受け入れる企業側のメリットが少ないことも、この制度の問題点だ。
大手企業には「社会貢献の一環」を行う体力があるかもしれないが、そこまでの規模でない企業やベンチャー企業にとってはインターンが負担となり得るのも事実。それでも、受け入れが採用活動に結びつくならメリットも大きいが、前述したように、インターンを採用活動に利用することは経団連の「採用選考に関する指針」で禁じられているので、経団連に加入している企業は行うことができない。
「企業にとって優秀な人材を確保することは、経営においてもっとも重要な課題のひとつ。限られた面接時間やペーパーテストで、キャリアのない学生の資質を見極めたり適正なマッチングをしたりすることができるのか、といった新卒一括採用の課題を踏まえると、インターンは採用活動に資するといえるでしょう」(同)