ところが、日本企業の多くは「ぶっ飛んだ発想」を苦手としている。そこには、常識を阻む5W1Hで構成される「6つの壁」があるというのだが、成功している企業はどのように壁を打ち破っているのだろうか? 本書の内容を簡潔にまとめてみた。
(1)When(時間の壁)
「すぐに欲しい」という市場のニーズに対して、リードタイムを短縮するには限界がある。しかし、その課題を「デジタルトランスフォーメーション」で改善したアイディダスと繊維メーカーのセーレンの事例は大変興味深いものだ。
(2)Where(場所の壁)
流通ビジネスにとって、仕入先や販売先を地理的に広げることは重要課題だが、そこには「場所の壁」が立ちはだかっていた。その壁を壊して世界規模に成長したのがアマゾンであり、世界中でトップスクールの講義を受けられる「Udacity(ユーダシティ)」である。
(3)Who(顧客の壁/提供者の壁)
ここには2つの壁が存在する。顧客の壁を打ち破った好例としては、純米大吟醸酒「獺祭(だっさい)」がある。マーケティング活動の結果、若者や女性に日本酒ファンを増やした。もう一つの「提供者の壁」は先述した「Uber」や「Airbnb」があげられるだろう。誰もが提供者になることができるようになった。
(4)What(製品技術の壁)
「物を作って売る」しかビジネスモデルがなかった製造業は、製品だけではない幅広いサービスを求められるようになった。建機大手のコマツはM&Aによって、モノの販売から鉱山事業全体を支援するソリューションビジネスに守備範囲を広げていく方針をとっている。
(5)Why(ニーズの壁)
現代は「所有」よりも「使用」に対する満足感が高い時代だ。コストパフォーマンは厳しく評価される。月6800円の会費でブランドバッグ使い放題のサービス「Laxus(ラクサス)」は、まさに現代だからこそ支持を得ているサービスだ。
(6)How(提供方法の壁)
これは販売チャネルの拡大という方法で壁を打ち破れる。例えばユニクロはオンラインで購入した商品を主要コンビニエンスストアで24時間受け取れる仕組みを構築した。また、メガネのネット販売会社「オーマイグラス」は、ユーザーが自宅でメガネの試着・注文・購入できる仕組みを構築することに成功している。
6つの「常識の壁」と、それを打ち破ってきた企業やサービスをまとめたが、いずれも根本からの発想の転換が必要だ。しかし、日々の業務をこなすことで手いっぱいな現場に、「常識の壁」を崩すことは難しい。そもそも、この壁は現場の日々の発想や行動の積み重ねから築き上げられたものばかりだからだ。
そのため、「ぶっ飛んだ」ビジネスモデル改革の策定と実行は、トップマネジメント主導で行う必要がある。