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世界から「日本のようになるな」と言われるほど絶望的な若者世代の雇用の実態

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 経済は緩やかに回復し、雇用も伸びている――。そんなニュースを見ても、実感を得られていない人は多いかもしれない。

 とりわけ、若い世代の雇用や社会的立場は、非常に低いと言わざるを得ない。それは日本のみならず世界的な傾向だ。

 そんな若者世代のリアルな窮状を論じている一冊が『僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか 各国「若者の絶望」の現場を歩く』(リヴァ・フロイモビッチ著、山田美明訳、阪急コミュニケーションズ刊)だ。

 本書では、日本を含んだ世界各国の「Y世代」(現在の20代~40代前半の人々)を取り巻く状況とその実態が描かれている。2014年に刊行されたものだが、当時よりもさらに厳しさを増した現状をとらえるためにも向き合っておくべき一冊だ。

■世界中の若者が「働けない環境」にいる

 失業率の高さ、低賃金雇用、学費増加。欧米諸国ではY世代を取り巻く環境が、親世代に比べて明らかに厳しくなっている。しかも、それらが良くなる兆しもまだまだ見えないという。

 高学歴であっても就く職がない。非正規雇用に甘んじるしかない。経済的な理由で結婚や家の購入ができない。こうした状況は日本だけではなく、世界の若者世代も同じだ。

 アメリカでは、高い技能を必要としない仕事に就いている大卒者は、2001年には四人に一人だったが、2014年には三人に一人になっている。このことを著者は「史上もっとも高学歴なのに職につけない世代」と表現しており、その窮状ぶりがうかがえる。

 ヨーロッパの若者の苦境はそのアメリカをしのぐという。

 スペインでは25歳未満の二人に一人、25~35歳の三人に一人が失業しており、労働市場は高齢者に比べ、若者が著しく不利な状況に置かれているという。これは若い世代に職業訓練を受ける機会がなく、職業スキルを伸ばせないためだ。

 また、イギリスではニート率の高さが大きな問題だという。1999年には11.6%だったニート率は、年々増加し、2010年には14.3%となった。これは先進国の中でも最高水準だ。ちなみに2010年のEU加盟国のニート率の平均は11.4%であることを考えると、ヨーロッパ全域のY世代が苦境に立たされていると言える。

■「失敗した雇用政策」の見本になっている日本

 本書では、日本のY世代の現状も詳細に調べられており、その背景も的確な分析がなされているが、その中でもとりわけ印象的なのが、Y世代に対して国が行う不安定雇用対策について論じている部分だ。

 日本のY世代の雇用を取り巻く現状を紹介した上で、著者は、グラスゴー大学のアンディ・ファーロング教授の「ヨーロッパやアメリカやカナダも、今後日本と同じ方向へ向かう可能性がある」という言葉を引用しているのだ。

 この言葉には、すでに日本のY世代の雇用政策は失敗している、という前提がある。このことが示す現状は、日本の若者世代にとって絶望的としか言いようがない。

 著者はこうした各国のリアルを踏まえ、最終的にY世代にどのような選択肢があるかを論じている。そこで示されているの、主に次の4つだ。

・起業するのであれば、新たなビジネスモデル、新たな技術、新たな消費需要を見つける
・仕事を変えること、さまざまな職業訓練を受けることに慣れ、柔軟性を身につける
・「この年齢になるまでにこうでなければならない」という固定観念を改める
・先を見越して政治的な行動(選挙への投票や反対運動)を起こす

 今の若者世代にも強みはある。現在のビジネスや政治を動かす層は、テクノロジーや価値観の面においては旧世代の知識と経験しか持たない人たちだ。若者世代は、その枠とは全く違う発想や価値観があり、新しいテクノロジーを簡単に使いこなせる。その強みを活かすことが、親世代とは違った豊かなライフスタイルを築く大きなポイントになるだろう。(ライター/大村佑介)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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