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松本人志「コア視聴率問題」は本当か…製作現場では「TVerでの回転率を重視」の指摘も

文=藤原三星
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メインの松本人志のほか、さまぁ〜ず、バナナマン東京03、ロバート、バイきんぐ、シソンヌら“コントのプロフェッショナル”が多数参加した『キングオブコントの会』(TBS系にて6月12日にオンエア、画像はTBS公式サイトより)

 長きにわたってお笑い界のトップに君臨し続ける松本人志(57)。去る6月12日にオンエアされた『キングオブコントの会』(TBS系)の世帯視聴率が6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったことに対して「キングオブコントの会は内容的にも視聴率的にも大成功でした ネットニュースっていつまで“世帯”視聴率を記事にするんやろう? その指標あんま関係ないねんけど。。。」と自身のTwitterに投稿。メディアが「視聴率」を扱う際に参照することが多い「世帯視聴率」に異論を唱えたことが物議をかもしているのだ。

 これに対し、多くのレギュラー番組を抱えるある放送作家はこう語る。

「確かにいまテレビ局では、CM枠を買ってくれるクライアントに対しては『コア視聴率』がもっとも重視されています。ざっくりいうと49歳以下を対象にした視聴率なのですが、各局で呼称が違い、また各局で扱う年齢の幅も異なるため、オフィシャルな指標としては出しづらいんです。なので、公表されるのは世帯視聴率のみ、ということになってしまう。例えば世帯視聴率はさほど高くない『水曜日のダウンタウン』(TBS系)は、実はコア視聴率が高いため、CM枠は飛ぶように売れています。ゆえに、松本さんがTwitterで語ったことは、ある側面では正しいといえます。

 しかし、そもそも視聴率をランキング化してあおったり、『年間三冠王』などと騒いでいたのもまた、テレビ局の側。それを、『今は世帯視聴率は重視してないから、記事にするな』といわれてもねえ。なので、高視聴率をうたい文句にさんざんお茶の間をあおってきたくせに、今さらそんなこと言われても……という声がメディアの側に多いのも事実です」

アドリブだらけの『キングオブコントの会』を、お茶の間は本当に楽しんだのか?

 では、そもそも松本人志がコア視聴率に言及した『キングオブコントの会』は、“本当に成功した”のだろうか?

「松本さんが言うように、コア視聴率で横並びトップだったのは成功といえるでしょう。しかし、松本さんがつくったとされる2本のコントに関しては、『民放20年ぶりの新作コント』とのうたい文句のわりには、2本ともあの『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)が生んだ名物キャラ『キャシィ塚本』っぽい雰囲気で、特段新しさは感じられませんでしたよね……。

 このコントの収録で松本さんは、台本通りには進めずアドリブで展開していく“ごっつええ感じ方式”でやったそうなのですが、共演した後輩芸人たちはみんな面食らったそうです。台本通りにしかコントをやったことがない後輩芸人からすると、天才・松本人志に合わせるだけで大変だったでしょうね。そんな彼らの戸惑いは画面からも伝わってきたため、仕上がりまくった傑作コントという感じではなかった。松本さん的には満足のいく仕上がりになったのかもしれませんが、お茶の間がどこまで笑ったかは、正直なところ微妙ではないかと思いますね」(前出の放送作家)

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2016年からAmazonプライム・ビデオにて配信されているお笑いドキュメンタリー番組『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』。「密室笑わせ合いサバイバル」を謳う。(画像は同番組公式Twitterより)

実は番組制作の現場では、「TVerや動画配信サービスでどれだけ観られているか」が重要視されている

 あと2年と少しで還暦を迎えるという年齢ながら、いまだお笑い界のトップを走り続ける松本人志。彼が本当の意味で、視聴率的にも内容的にも再びお茶の間を席巻する日は来るのだろうか? あるテレビ局のプロデューサーは次のように語る。

「松本さんが言うように、もはや世帯視聴率で我々は商売をしてません。ではそれがコア視聴率に移行したのかというと、実はそういうわけでもないんです。たとえば今、スポンサー営業的に重視されるコア視聴率とは別に、現場の指標としては、バラエティもドラマも、TVerや動画配信サービスでどれだけ観られているか、という視点が非常に重要視されています。だから松本さんが本当に『視聴率的にも成功した』のだと世間にいわしめたいのならば、例えばYouTubeでやってみせるのがもっともわかりやすいのでしょうね。

 松本さんのつくる笑いは“作家性”がとても強い。それが評価されたからこそ、Amazonプライム・ビデオで手がける『ドキュメンタル』や『FREEZE』は、ともに2020年の年間ランキングのツートップを独占したのでしょう。しかし、同サービスでは、実際の再生回数は公表されていません。これがYouTubeとなれば再生数がはっきり出るわけで、もっともフェアだといえる。ゆえにもし松本さんが視聴率的な評価に不満を抱えているなら、ぜひとも“ストロングスタイル”のYouTubeでやっていただきたいところではある。

 とはいえ、かつてのライバルであるとんねるずがテレビから締め出される一方で、ダウンタウンはいまだにテレビ界のど真ん中に君臨し続けている。そんな状況下で、そんな不利な戦いはしないでしょう。吉本芸人がここまでバラエティ界を席巻している以上、松本さんがテレビから締め出されることはまだまだないでしょうし、となれば、そもそも視聴率なんて気にする必要もないはず。今回の視聴率に対する松本さんの苦言は、“キングオブバラエティ”ならではの“高次元な悩み”なのではないでしょうか」

 今のお笑い番組のベースを作り上げ、しかもそれを常にアップデートし続けてきた男、松本人志。孤高の天才が抱える悩みは、まだまだ尽きそうもないようだ。

藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。

Twitter:@samsungfujiwara

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