“料理をしない妻”にスポットを当てた6月12日付「マネーポストWEB」記事『食事は家事代行と外食…料理をしない麻布妻の定番文句とは』が掲載直後、一部インターネット上で話題を呼んでいた。
記事の内容を紹介すると、ある日、既婚の女性ライターが“セレブな麻布妻”のママ友に百貨店の食品売り場で遭遇し、「買い物ついでに夕飯の材料を買おうかなって」と話すと、「え? 夕飯作ってんの? やーだ! 子育て中だよ、私たち? 夕飯なんて作る?」という反応が返ってきたという。さらに、「週1回は、家事代行サービスの人が掃除と一緒に作るんだけど、他は外食」「(自分が)作るのは月に1度あるかないか」などと家庭の食事事情を明かされたという。
この記事を受け、ネット上では既婚女性から次のような反響の声が続出した。
「こっちも働いてるのに、旦那が家事を手伝ってくれないから、我が家も自炊なしで済ませてます」
「毎日のメニューを考えるのはすごいストレスだから、気持ちはわかるなあ」
「子どもにはやっぱり“お袋の味”を思い出に残してほしいから、少しでも自炊はするべきでは?」
また自身の妻や知り合いなど、自炊をまったくしない人が周囲にいるという男性たちからも、以下のようにさまざまな声が上がっている。
「共働きなので食事は外食で割り切ってるけど、たまには手料理が恋しくなります……」
「知り合い夫婦はお互い全然料理しないみたいだけど、ずっとうまく続いてるよ」
「友人の奥さんは仕事が毎日忙しくて、自炊は完全に諦めているみたいです」
共働きによる負担の大きさから自炊を断念する夫婦も多いようだが、今年2月に公開された「世界5カ国の『共働き』に関する意識調査」(リンナイ調べ)によると、日本人男性の7割以上が妻に料理を任せっきりにしている結果が明らかに。調査の結果を受けて立命館大学産業社会学部・筒井淳也教授は「『仕事をしない主婦が完璧な家事・育児をこなす』ような1970年代的な社会環境は失われつつあります」とコメント。
筒井教授はさらに「共働き夫婦では、『毎日やっていた作業を2~3日に1度にする』といった割り切りは、仕方がないというよりも『必須』なのです」と続け、完璧な家事をしない・求めないことの重要さを強調している。生活を送るうえで欠かせない家事も、カットできる部分は簡略化が必要なのかもしれない。
家事に費やす時間、夫婦間で圧倒的な差
こうした“妻の自炊離れ”の傾向について、夫婦問題研究家、NPO日本家族問題相談連盟理事長の岡野あつこ氏は、次のように解説する。
「料理をしない妻が増えているのは事実です。結婚後は専業主婦になる女性が一般的で『家事や子育てをするのは妻の仕事』とされていた頃から比べると、今は夫婦共働きが当たり前の時代。にもかかわらず、『料理は女性がつくるもの』という古い概念をいまだに持ち続けている男性に対して不満を感じる女性は大勢います。『夫と同じように外で働いて疲れているのに、妻の私だけが料理をしなければならないなんて不公平だわ!』と感じている女性も少なくありません。
育児に熱心な“イクメン”や、家事を積極的にこなす“家事メン”が増えているという話題がインターネットや雑誌、テレビなどで取り上げられることはあっても、それはあくまでも一部の話。実際、厚生労働省が発表している夫婦における家事関連の時間を調査する最新データでも、1週間のうち、妻が家事関連に費やす時間は『5時間以上』なのに対し、夫はたったの『47分』しかありません。女性側に専業主婦と仕事を持つ妻の違いはあっても、男性側の家事に費やす時間が圧倒的に少ないという事実に変わりはありません。
だからこそ、円満な夫婦関係を続けていくためには、料理をしない妻についても夫の理解が必要になります。『子育て中は、料理は家事代行業者に頼もう』と条件付きで家事のアウトソーシングをしたり、『妻に残業があるときは、夫が夕食の準備と片付けをする』という協力体制を夫が自ら提案するのは、今どきの夫婦にとって大切な思いやりのかたちのひとつ。円満な夫婦関係を築くことは、ビジネスでチームビルディングを考えるのと一緒。夫婦どちらか一方にかかる負担が大きいままでは、同じ方向を向いて進み続けることは難しく、やがて関係崩壊の危機を招きかねません。
【夫へのアドバイス】
とくに、夫から妻に対する「たいして稼ぎもないのに……」「メシの支度くらい、なんとかならない?」という言葉は絶対NGワード。「だったら二度と料理はしません」「じゃあ、自分でなんとかすれば?」などと妻の逆ギレを招くだけなので、夫は自分のためにも自分の心のなかのつぶやきとして秘めておきましょう。
【妻へのアドバイス】
『料理は面倒くさい』というマイナスの側面だけでなく、円満な夫婦関係を続けるプラスの面も持ち合わせるものだということは忘れずに。週末などまとまった時間があるときに、『最近、お疲れのようだから』と疲労回復メニューをつくったり、『メタボ対策よ』とヘルシーなダイエットメニューを食卓に並べたりして、夫の健康面を気遣う姿勢をアピールすると、夫は妻に感謝するようになるもの。妻に大切にされてうれしくない夫はいないからです。妻の手料理は夫の健康面をサポートするだけでなく、夫婦の気持ちを結びつけることにもなるものなのです」
妻と夫、それぞれが相手への思いやりを持つことが大切といえよう。
(文=編集部)