戦術的な面でもひとつ挙げよう。第2戦のヨルダン戦は、第1戦のオマーン戦に比べて、左トライアングルだけでなく、右トライアングルが奮起してよく機能してきた。これを生かすためには真ん中がますます強くならなければならない。そのためには、ヨコのポジションチェンジという手があるが、本田が譲らなければ、香川や岡崎が左や右だけでなくもっと真ん中に出てボールを受けなければならない。つまり、香川か岡崎は、本田とタテに並べばいい。そうすればうんと攻撃の厚みが出て、本田の得点力を下げずに、自分も点を取れるはずだ。
人を最大限に生かしつつ、自分を最大限に生かす――そのことによって、集団の成果を最大限にする、これが個人と集団の勝利の鉄則だ。
以上のことを実践できれば、第1戦で日本が下したオマーンと先日引き分けたオーストラリアに、3点差以上で圧勝できる。6年前のドイツワールドカップの雪辱のためには、相手の息の根を止めねばならない。あのときの監督の無能ぶりやチームのガタガタとは、天と地ほどの差がある今の日本代表チームに、それができなくてどうする。
(文=大西 宏/コンサルタント、ビジネス作家)
●大西宏(おおにし・こう) 三国ケ丘高校(大阪府)時代、サッカー全国大会にMFとして出場し2位。パナソニック元営業所長、元販売会社代表。同社サッカー部長時代に同部を天皇杯獲得に導き、ガンバ大阪発足に際してはその陣頭指揮を執り、釜本邦茂監督を招聘した。退職後は関西外国語大学教授などを歴任し、現在、キャリアカウンセラー、産業カウンセラーとして講演や企業・現役ビジネスパーソンのサポートを行っている。『自由と強制のリーダーシップ』(中経出版)、『松下幸之助の思考法』(実業之日本社)、『サッカー日本代表に学ぶキャプテンシー』(イーブック・ジャパン・アソシェーション)など著書多数。