「働き方改革」のなかで、「フリーランスの活用」を経済産業省などが中心にいいだし始めている。最近では『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』(山田竜也/日本実業出版社)や『マンガ フリーランスで行こう! 会社に頼らない新しい「働き方」』(高田ゲンキ/インプレス)などが出版され、『フリーランス&“複”業で働く! 完全ガイド』(日本経済新聞出版社)といったムック本も出され、働き方としての「フリーランス」が一躍注目されている。
「自由な働き方」を称賛する流れは以前からあった
安藤美冬という人物をおぼえているだろうか。安藤は「ノマドワーカー」として活躍し、カフェにパソコンを持ち込んで働く姿はいくつものテレビ番組で紹介され、一躍時の人となった。その頃、会社に縛られず自由に働きたいという考え方が一部の間で広まっていった。その流れのなかでシェアオフィスなどのサービスが普及し、いまのフリーランスブームを下支えするインフラとなっている。
さらにいえば、パソコンが普及し始めた時期、デザイナーやライターといった職種を中心に「SOHO」という働き方が脚光を浴びたこともある。「SOHO」とは、スモールオフィス・ホームオフィスの略である。
SOHOブームとノマドワーカーブームの間には時間の間隔があったが、ノマドワーカーブームと現代のフリーランスブームは地続きである。
需要側と供給側の奇妙な利害の一致
デザインやライティング、プログラミングなどの仕事は、必要なときにだけ人に依頼したいという考えが企業にはある。仕事によっては、専門の社員を雇用するよりも、必要に応じて外部に依頼したほうがいいケースがあるのは当然だろう。
一方で、仕事をする側の人たちの中には、「氷河期世代」と呼ばれる人たちも多い。1990年代中頃から2005年頃の「就職氷河期」に就職活動を行っていた世代で、今の30代後半から40代前半くらいの人々が当たり、前述の山田氏や高田氏もこの世代に当たる。ブラック企業でひどい働き方を強いられ、長時間労働や社内でのいじめに苦しむのは嫌だという思いを抱いている人も多いだろう。筆者もその時の体験を、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)に記している。
そういった働き方を強いられて、企業社会、もっといえば「社畜社会」に対して嫌な思いをした経験のある人たちが「フリーランス」という働き方・生き方を選択しようとするのは、わからなくもない。
必要なときにだけ人を確保したい企業側、「社畜社会」に縛られたくない働く側。ここで需要側と供給側の利害が一致するのである。