ロシアワールドカップ終了後、日本代表を牽引してきた長谷部誠選手、本田圭佑選手が代表引退を表明。2022年のカタールワールドカップに向けて、世代交代の波が来ている。
森保一新監督となり、親善試合に向けてのA代表の選手招集では、ポルティモネンセ(ポルトガルリーグ1部)の中島翔哉選手やフローニンゲン(オランダリーグ1部)の安堂律選手、ハンブルガーSV(ドイツ2部リーグ)の伊藤達哉選手をはじめ、海外リーグで活躍する若い選手が名を連ねたことは記憶に新しい。
近年、20歳前後で海外リーグに移籍するサッカー選手が増えている。とはいえ、海外で結果を残せずに苦労し、日本に戻るケースも多い。異国の環境に適応しながら、自分の力を最大限に発揮するには、どうしたらいいのか。
11年に渡り、フランス、ロシア、ブルガリア、ポーランドの8クラブで戦ってきた松井大輔選手(横浜FC)が欧州で成功する条件を紹介するのが、『日本人が海外で成功する方法』(松井大輔著、KADOKAWA刊)だ。
語学力よりも大切なのは思いきった…
海外移籍のとき、気になるのが英語力はどのくらい必要なのか、ということだろう。
松井選手の初の海外挑戦となったフランスリーグ2部のル・マンに移籍したのが2004年。当時のフランスは、パリやリヨンの大都市以外は英語を話す人はまだ少なかったが、クラブ内には英語を理解できる人がいた。そして、彼らとはお互い知っている単語を並べるだけの「中学英語」でコミュニケーションが通じていたという。
また、岡崎慎司選手(レスター/イングランドリーグ1部)はドイツ語も英語もそこまで流暢に話せるわけではないのに、インタビューに堂々と答えている。そういう姿を見ると、大事なのは、小手先の文法やボキャブラリーの多さではないと痛感されられる、と松井選手は述べる。大切なのは、思い切ってコミュニケーションしようとする姿勢なのだ。
松井選手が新たなコミュニティに入り込むときによく使っていた方法が「下ネタ」だったそうだ。
フランスで、下ネタを言ったり、教えてもらったりしたら、場が物凄く盛り上がり、「この威力は万国共通なんだ」と改めて気づかされたという。
下ネタなんてくだらない、といった堅いスタンスでいると、なかなか現地に適応できず、苦労する可能性が高い。そういうことがサラッと自然にできるか否かで、海外向きか不向きかが分かると言っても過言ではないくらい、適応には差が出てくるのだ。
■ノーと言える日本人になる
明るく陽気に周りと付き合うことが異国で成功する近道だが、全て相手の言うことを受け入れているだけでもダメなのが海外という場所。
ミスや失敗を他人のせいにすることは欧州では毎日のように起こり、意見が食い違うこともある。そういうときに「ノーと言える日本人」になる必要がある。自分の意志を示すことは海外では必要不可欠なのだ。
サッカーに限らず、留学や旅行などで海外に行くとき、少なからず英語を話す必要性があるだろう。そんなとき、積極的にコミュニケーションを取ることや自分の意見をはっきりと相手に伝えることは重要となるはずだ。
多くの若い日本人選手が海外でプレーしているが、活躍したときに結果だけ報道され、彼らの生活はあまり知らないというのが実情だろう。クラブの環境や国の情勢、価値観の違いや言語の違い、日本人選手とは身体能力が違うし、リーグによってプレースタイルも違う。松井選手の経験談から、欧州でプレーする選手たちがどのようなところでプレーしているのかがわかるはずだ。 サッカーファンは、そういったところでも楽しめる1冊だ。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。