「ストレス社会」といわれて久しい昨今、さまざまな心配や不安を抱えながら、毎日をなんとか過ごしている方も多いでしょう。
「挨拶を返してくれなかった上司は、私を嫌ってるのかな…」
「出世した同期に比べて、私はなんてダメなんだ」
「締切に間に合わない。ノルマを達成できない」
「明日のプレゼン、失敗しないか心配…」
「このまま今の会社にいて、将来大丈夫だろうか」
「上司の顔色をうかがいながら働くのに疲れた」
「残業ばかりの毎日。でも自分が抜けたら、みんなに迷惑をかける」
「将来が見えない。かといって会社を辞めるわけにも…」
ささいなことに敏感になったり、他人の評価や視線を気にしすぎたり、責任感が強く生真面目な人ほど、高い生産性を求められる現在のビジネス界では、生きづらさを感じてしまいます。
だからといって、会社を辞めて、働く環境を変えるって、それも大変…。不安を抱えやすい方々が、いま置かれた環境で、生きづらさを解消する方法はないのでしょうか?
ビジネスパーソンの悩みをよく知る禅僧の松原正樹さんは、9月に上梓した著書『心配事がスッと消える禅の習慣』(アスコム刊)の中で、不安や心配事にどう対処すればいいのか、禅の教えをベースに伝えています。
心配事の96%は、心が生み出した幻 ちょっとしたコツで不安は消すことができる
松原正樹さんは臨済宗妙心寺派佛母寺の御住職でありながら、スタンフォード大学やコーネル大学で教鞭を執り、グーグル本社でも禅やマインドフルネスを教えています。ニューヨークを拠点に活躍する国際的な禅僧です。
松原さんは「心配事の9割は、自分の心が生み出した幻」であるといいます。実際、アメリカのある調査では、心配事のうち96%は実際には起こらないという結果も。つまり心配性の人たちは、96%もの無駄な心配事に時間を費やしてしまっていることになります。
一度しかない大切な人生を、ほとんど起きない心配事に費やすなんてもったいないこと。心配事を消すために、松原さんは次のような方法を提案しています。
1.朝起きたとき、鏡に向かって「主人公!」と呼びかける
→「主人公」というのは実は禅語で、中国唐代の禅僧である瑞巌(ずいがん)和尚という方が、毎日自分に向かって「おい、主人公!」と呼びかけていたことからきているそうです。なぜそんなことをするかというと、人は簡単に自分を見失ってしまうから。もし、人の目ばかり気にして、本来の自分を出せないでいるという自覚がある人は、試してみてはどうでしょうか。
2.歩くときは「歩くこと」に意識を集中する
→禅では経行(きんひん)と呼ばれている「歩く瞑想」。基本は、歩行中の足に意識を集中すること。地面を蹴り上げてから着地するまで、右、左、右、左、全精神をその一歩に集中して歩きます。「歩くこと」に意識を集中することで、しだいに心が整い、心配事が想像より大したことではないことに気づけるのです。
3.忙しく不安なときほど、「世界一簡単な坐禅」をする
→松原さんは深呼吸こそ、「世界一簡単な坐禅」だといいます。鼻から吸って、鼻から吐き出す。ゆっくり15秒くらいかけて一回の呼吸をしてください。これだけでいいのです。忙しいときは深呼吸の際、周囲の音を意識してみる。すると、外を走る車の音、自分の呼吸の音、小鳥のさえずりなど、さまざまな音に気づけます。深呼吸を習慣にすると、もし不安な気持ちになっても、自分で自分の心をコントロールできるようになるそうです。
松原さんは、ご自身も「心配性だった」そうです。でも、これらの禅的習慣を繰り返していくなかで、しだいに自分で自分の心をコントロールできるようになったといいます。
紹介する教えには、グーグル社員が実践するマインドフルネスの要素を逆輸入したものも。ビジネスの現場で実践できますので、ご自身が心配性だと自覚されている方は、生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。