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「合理的な判断」はグループで行われる理由

取材・文=大野和基/ジャーナリスト
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「合理的な判断」はグループで行われる理由の画像1「Gettyimages」より

 インターネットやテレビなどのメディアで流れる真偽不明の情報が、世間を騒がせることがたびたびある。時にはそれが取り返しのつかないほど大きな損害をもたらすこともある。そのような情報は絶えることがない。なぜ、多くの人が信じ、振り回されることになってしまうのだろうか。また、どうすれば情報の確かさを知ることができるのだろうか。

『知ってるつもり―無知の科学』(早川書房刊)の共著者で認知科学者のスティーブン・スローマン氏(米ブラウン大学教授)に、「無知」とは何か、どうすれば合理的な知識を得られるか、などについて話を聞いた。

多くの人は自分が知らないことを知らない

――『サピエンス全史』で世界的に有名になったユヴァル・ノア・ハラリ氏がこの本を絶賛していますね。ハラリ氏に私は昨年インタビューしまして、その模様は『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』(PHP新書)に収録されています。ハラリ氏は「行動経済学者や進化心理学者たちは、人間の意思決定のほとんどは合理的な分析ではなく、感情的な反応や推測に基づいたheuristic shortcut(短絡的思考)に基づいていることを立証した」とニューヨークタイムズのコラムに書きましたね。立証した内容についてあなたは同感ですか?

 スティーブン・スローマン氏(以下、スローマン) もちろん同感です。人間は合理的な分析をすることができますが、それは一人ひとりがとても簡単にできることではないと思います。実際、我々が行う合理的分析は、我々の文化を通して獲得したツールを必要とします。ですから、個人がどんな問題にせよ、特定の問題を取り上げて、それをかなり合理的に分析することは非常に難しい。問題は非常に複雑ですから。

 個人として我々は、ほかにいろいろなツールを自由に使うことができます。そのひとつがheuristics(経験則)で、もうひとつが感情的反応です。感情的反応も、ある意味では経験則です。その感情が我々を導きます。我々は確かに思考しますが、その思考プロセスはかなり狭く、表層的になりがちです。ですから、人間ができる、豊かな合理的分析はグループで行われることが不可欠になります。グループになると多くの人の専門知識を利用することができます。

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