プロ野球選手として、監督として、数々の輝かしい記録を残してきた野村克也氏。
野村氏曰く、自分は何の才能もない男だったが「弱者が強者を倒すためには何をすべきか」を常に考えてきたおかげで、プロの世界で大成することができたと語る。
そして、選手時代、新人の頃から試合で気づいたことを書き綴った「メモ」があったからこそ、選手としても、監督としても、強者を倒してこれた。野村氏が人生を切り開いていく上で、「メモ」はとても重要なものだったのだ。
『野村メモ』(日本実業出版社刊)は、日々の気づきを確実に実行することに昇華させるメモの技術を紹介した一冊。野村氏はどんなメモを書き続けてきたのだろうか。
まず、メモには2つの効用がある。1つ目は「記憶力を高めてくれる(経験したこと、学んだことを忘れにくくする)」こと。2つ目は「観察力、思考力(発想力)を高めてくれる」こと。野村氏は、この第2の効用のほうに重要性を実感しているという。
契約金0のテスト生として南海ホークスに入団。3年目に1軍に定着してからは、シーズン中、ずっとメモを取り続け、就寝前にノートをまとめ、その積み重ねによって正捕手の座を獲得した。
以前書いたメモやノートを読む返すことによって、改めて気づくこと、反省することが出てきたりするので、そういった意味でもメモは「学びの宝庫」。このメモが学びとなり、人を育てるのだと野村氏は確信している。
さらに1990年代、情報を収集し、活用した「ID野球」で4度のリーグ制覇、3度の日本一という、それまで低迷していたヤクルトスワローズの黄金時代を築いたのは、当時監督だった野村氏だ。
そんな氏が振り返ると、ミーティング中にしっかりとメモを取るタイプは、大成した選手が多いように感じるという。古田敦也氏、宮本慎也氏、池山隆寛氏、広澤克実氏といった当時のヤクルトの主力選手たちは、しっかりとメモを取っていたそうだ。
そして、ミーティングで聞いた話をメモし、それを読み返しながら自分の中でしっかりと消化する。そういった地道な蓄積がミスを減らすことにつながり、「考える力」を養ってくれると野村氏は指摘する。当時のヤクルトの強さの原動力はメモにあったのだ。
野球選手に限らず、サラリーマンも学生もメモを取ることはある。では、いいメモを書くにはどうしたらいいのか。
野村氏が考える「いいメモを書くコツ」は、要点をできる限り絞り込み、本当に言いたいこと、覚えておきたいことだけを記すことだという。
そのためにもっとも有効な書き方が「ポイントを絞り、内容を箇条書きにする」こと。メモだけでなく、人にメールを送る場合も同じ。相手の頭にスッと入るように書くには、ポイントを絞り簡潔に書くのがいい。
自分にとっても、相手にとっても見やすく、後の有効なデータとするためにも、理解しやすい「箇条書き」メモを取ることが大切なのだ。
仕事だけでなく、人として成長するためにも、学びの一つの手段として野村流の「メモ」を活用してみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。