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カウンセラーが語る、毒親が生まれる背景と自由になるプロセス

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『毒親の彼方に』(幻冬舎刊)
『毒親の彼方に』(幻冬舎刊)

 ここ数年で「毒親」という言葉はすっかり広がった。

 虐待やネグレクトなどで我が子を苦しめる親や、子どもを支配しようとする親、あまりにも過保護すぎる親など、子どもを苦しめる親に対して「毒親」という言葉が広く使われるようになっている。

 大学教授で、長らくカウンセリングルームでカウンセラーを務めてきた袰岩秀章氏の著書『毒親の彼方に』(幻冬舎刊)は、「毒親」とはどんな親なのか(どんな親であれば毒親ではないのか)、毒親から自由になるとはどういうことなのか、自由になるまでのプロセスなどについて、実例を交えて解説していく。

「憎たらしい姑そっくりで、殺意さえ感じた」


 ではどんな人間が、どのように「毒親」になるのか。

 母娘関係に焦点をあてている本書だが、いくつかのパターンが示されている。

 その一つが、我が子に愛情を感じられないことで毒親になるパターンだ。たとえば、生まれてきた娘を見た瞬間、「憎たらしい姑そっくりで、殺意さえ感じた」という母親がいる。

 もちろん、本当に我が子を殺そうとしたわけではないし、暴力をふるったわけでもない。ただ、どうしても我が子を愛することができなかった母親は姑に対するように娘と接したという。

「余計な口は利かせないってことですかね、こちらも話すことは必要最低限にとどめて。娘が何か口を開くと、じろっとにらんでやるんですよ」(P 20より)

 暴力や暴言がなくても、娘からしたら母の放っている威圧感に脅されているような感覚を持っていたことは想像に難くない。娘に罪はないのはもちろんだが、「毒親」を考える時に、母娘関係以外の人間関係(ここでは嫁姑関係)が影を落とすことがあるというのは重要な指摘かもしれない。

「娘はわたしの言うことだけ聞いていればいい」


 娘を憎む毒親がいる一方で、娘を可愛がる毒親もいる。

「娘はわたしの分身ですから、わたしの言うことは聞かないといけません。それだけでいいんです」(P40より)

 自分の分身、というほど娘をかわいがっているようにも聞こえるが、この発言からは娘を支配したいという意識も垣間見える。かわいがることで子どもをコントロールしようとする意図は、どんな親であっても多少はあるはずだが、毒親の場合、それが子どものためではなく、自分のためなのだ。

 こうした育て方をしてしまうことの原因として、本書では親自身の幼さをあげている。自分自身が幼いために、嫁げば嫁いだ相手のいう通りに生き、娘がかわいければその気持ちの向くままに育て、うまくいかなくなればうろたえる。娘はそんな母親に振り回されてしまう。

娘が「復讐の対象」になった母親


 また、出産と同時に周囲の関心が娘ばかりに行き、自分の苦労が評価されていないように感じたことで、「復讐の対象」として娘を見てしまうようになった母親もいる。

「出産はどちらかというと難産でしたし、生まれたあとも体力が回復しないままに授乳から何から大変なのに、皆さん(夫や夫の両親のこと)、娘の心配ばかりして、わたしのことはこれっぽっちも気にかけやしませんでした」(P46より)

 大変な出産をこなしたことやその後の子育ての苦労がかえりみられることはなく、娘だけがかわいがられ、自分は下働きを押しつけられる。こうした環境で娘に愛情を持てなかったこの母親は、夫や義父母への悪口を巧みに娘に吹き込むという「復讐」に出た。幼いながらに家庭内でバランスをとって立ち回ることを強いられた娘は、小学校高学年からうつ気分が強くなり、中学生になると自傷行為が増えていったという。

「毒親」とひとくちにいっても、そこに至るまでの過程も環境も人それぞれ違う。親本人にも問題はあるのだろうが、親自身の育てられ方や夫との関係、夫の両親との関係も深く関わってくる。これらのさまざまな事情を抱える毒親とその娘に、著者がどう対処していったのかが本書の読みどころだ。

 また、毒親に育てられていた娘たちが母親からどう自由になっていったのか、そこまでにどんなプロセスを必要としたのかについても、本書では実例をあげて解説していく。最終章に書かれている手鏡をめぐる寓話は、毒親からの解放と自身の成長について象徴的だ。

 親にとっても、子にとっても気づきの多い本書。今の自分と自分が置かれた環境を客観視して、人生をより良い方向に変えていくために、一役買ってくれるはずだ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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