日頃、多くのビジネスパーソンが身にまとうスーツ。冬場になると気になるのが、そのスーツに合わせる防寒アイテムの許容範囲だ。マフラーや手袋などは問題ないが、ビジネスシーンでモコモコとしたイヤーマフや顔が隠れるフェイスガードはマナー違反になりそう。とはいえ、寒さはしのぎたい……。
いったい、ビジネスパーソンの冬ファッションはどこまで許されるのか。ビジネスマナーやコミュニケーションスキルの研修などを行うスマートコミュニケーションズ代表の篠原あかねさんに話を聞いた。
スーツにダウンジャケットはNG?
「ビジネスシーンにおける冬の装いのOKラインといっても、職種や業界によって規定の服装が違いますから、明確な定義は非常に難しくなってきています」(篠原さん)
確かにIT系やクリエイティブ職に目を向けると、普段着と変わらないようなラフな服装で働く人も少なくない。
「ラフスタイルのビジネスパーソンが増えてきている影響か、スーツの場合でもカジュアルダウンしている人をよく見かけますね。特に多いのがダウンジャケット。最近はスーツにも合わせる人が多いですが、やはり仕事の場ではビジネスコートがふさわしいでしょう。とはいえ、ダウンユーザーが多いことから、社外の人と会う場合を除いては着用してもOKという風潮もあります」(同)
なかばOKとなっているダウンジャケットだが、選ぶ際はスーツの着丈より長いものを選び、裾が出ないようにするのがマストだ。また、厚みがありすぎると野暮ったく見えるため、体のサイズに合ったものをチョイスしよう。
続けて篠原さんは、頭部の防寒に欠かせない帽子についても、アウターごとに最適なものをチョイスすることが重要だと話す。
「一般的にビジネスシーンにふさわしい帽子はフェルトハットやボーラーハットですが、ダウンジャケットにフェルトハットはミスマッチですよね。ダウンを着るならニット帽などが良いですが、いかんせんカジュアルすぎます。ニット帽をかぶるなら、つば付きのものにすると良いでしょう」(同)
しかし、本来はダウンジャケットもつば付きのニット帽もビジネスマナー的にはあまり好ましくないため、「通勤時だけ利用するなど、TPOには十分気をつけてほしい」と篠原さんは言う。
「社外の人に会う場合は、やはりカジュアルなアイテムはNGです。通勤時はダウンジャケット、就業中はビジネスコートというふうに状況に合わせて使い分けると良いでしょう。帽子やイヤーマフなどを着用して取引先に出向くときは、必ず先方に会う前に外し、鞄の中にしまうようにしてください。また、外した後は身だしなみのチェックも忘れずに」(同)
靴だけはフォーマル一択
アウターや小物はTPOさえ気をつければある程度カジュアルダウンしても良いというが、どんなに寒くても崩してはいけない部分がある。それが靴だ。
「靴だけはフォーマル一択。スーツに合ったものを履くようにしてください。ただし、大雪や台風などの悪天候時や積雪量の多い雪国など、天候や地域によっては、革靴ではなくレインシューズやスノーブーツの着用もOKです」(同)
とはいえ、足元は特に冷えるため、ブーツなど防寒性の高い靴を履きたい人もいるだろう。「そういう人にオススメなのが、下半身用のインナーをプラスすることです」と篠原さんはアドバイスする。
「腰から足首までを覆ってくれるメンズタイツなら、動きやすさや機能性も申し分ないと聞きます。ほかにオススメなのが『ハーフソックス』という指先から土踏まずまでの丈の5本指ソックスです。私の周りには、ハーフソックスの上に通常の丈の靴下を重ね履きして防寒している男性もいますよ」(同)
先ほども触れたが、防寒具は着込みすぎるとどうしても着膨れして野暮ったく見えてしまう。しかし、インナーでの寒さ対策ならシルエットに響かず、見た目の印象を損ねない。
「さらに、インナーは衛生的にも優れています。冬場でも満員電車などではけっこう汗をかきますよね。そういうとき、メンズタイツやハーフソックスが汗を吸収してくれればスーツが汚れません」(同)
インナーを利用した防寒は、暖かさだけでなく見た目のカッコよさや清潔感も手に入る、一石三鳥の方法なのだ。さらに、見た目がカッコいいと「仕事ができそう」という印象を持たれやすく、仕事面でも有利だという。
「ビジネスコートにフェルトハットを合わせ、肌着は防寒に特化したもの、首元には大判のストールという組み合わせなら、暖かさ、清潔感、オシャレのすべてが手に入ります。大判ストールは巻き方次第で背中まで防寒できる上、見た目もカッコよくオススメですよ」(同)
カッコいい格好とダサい格好。どちらも同じように寒さを防げるのであれば、周りから一目置かれるような洗練されたスタイルでの防寒を目指してみてはいかがだろうか。
(文=ますだポム子/清談社)