この時期に本格化する就職活動で、究極の売り手市場が続いている。株式会社ディスコの調査によると、リーマン・ショックが大打撃を与えた2010年10月1日時点での大学4年生の内定率は77%、対する18年は同92.7%と15ポイント以上も高い。
1年上に当たる先輩の就活実績は、後続する就活生の態度に影響する。昨年の就活生である2019年卒の就活生がエントリーした企業は平均26.2社。2年前と比べて11社減少した。より少ないエントリーでも内定しやすい現状を反映した数値となっている。
しかし、「受ければ通る」と思わせる部分にこそ、就活のワナが潜んでいる。
余裕の就活に潜む「就活格差」のワナ
今年も売り手市場は続く見込みのため、エントリー社数が減り、より志望度の高い企業に絞った選考対策ができることは望ましい。しかし、今年は就活生があぐらをかいていればよいという年ではなくなってしまった。
経団連の就活時期撤廃が決まったからである。例年、経団連は新卒採用の解禁日を定めてきた。こっそりと内々定を出す企業はあったものの、公には「よーい、ドン」で就活を始められたのである。
しかし、経団連は2021年春入社の学生から、採用面接などの解禁日を定めた指針を廃止することを正式に決定した。現行の指針が適用されるのは、公には20年入社の現在の大学3年生が最後となるが、この経団連の決定を受けて、一般的な解禁日とされてきた学部3年・修士1年の3月には採用を終える企業すら出てくる。
そうなると、先に就活を始めた学生ほど楽になる。早期選考で内定を手に入れ、あとはごく一部の本命企業に的を絞りながら卒論や旅行など、学生生活を謳歌できるからだ。
しかし約1000人の就活生を見てきた筆者の経験から述べると、学歴が高ければ高い学生ほど早期に就活を始めるトレンドがある。東京大学~早稲田大・慶應義塾大の学生は早ければ学部3年生・院1年生の4月から就活を開始。MARCHの優秀層が夏ごろに動きだし、それ以下の学生は早くても冬頃に就活を考え始める。
つまり、「普通の学生が就活を始めようかと考えた頃には、東大生はとっくに内定を手に入れ就活を終了している」という格差が生まれ得るのだ。