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マインドフルネス批判も…心理学者「成功のためにはダークな感情が必要」 その理由とは?

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マインドフルネス批判も…心理学者「成功のためにはダークな感情が必要」 その理由とは?の画像1※画像はイメージ(新刊JPより)。

 私たちのほとんどは幸福になりたいと思っているし、快適に生きたいと思っている。しかし、幸福や快適さをいざ手に入れて、そこに浸れば浸るほどに、私たちから成功が遠ざかっていくと言われればどう思うだろうか?

 そして、どうやらそれは嘘ではなく、本当のことのようだ。

 米ジョージ・メイソン大学の心理学者トッド・カシュダン氏と、その研究方法から“心理学界のインディ・ジョーンズ”の異名を持つロバート・ビスワス=ディーナー氏は、成功のためにはポジティブ感情ではなくネガティブ感情が必要であり、そのダークな面をいかに活用するかという点にフォーカスをあてている。

■人間はポジティブな感情よりもネガティブな感情に強く反応する

 なぜ、成功のためにネガティブな感情が必要なのだろうか?

 その根拠となるさまざまな事例がある。例えば、フロリダ州立大学のロイ・バウマイスターたちが発表した『悪いものはよいものより強い』というタイトルの論文には、「人はポジティブな出来事よりも、ネガティブな出来事により強く反応する」と書かれている。

 どういうことか。

 どんなに楽しい1日を過ごしても、翌日には何の影響も残さない。しかし、最悪の1日を経験すると、翌日まで尾を引いてしまう。多くの人がこのようなケースを経験したことがあるだろう。実はこれと同じような心理学の調査結果が頻繁に見られるという。

・結婚において性生活がうまく行っていることは、夫婦の結婚に対する満足度を20パーセントほど高める。しかしうまく行ってない場合は、満足度が50から75%パーセント低下する。
・人は嫌な臭いには強く反応する。長い時間鼻にしわを寄せる。心地よい香りには一瞬笑顔を見せるだけである。(p.82より抜粋)

 つまり、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事の方が、人間の感性に強く影響を及ぼすということだ。「気のめいるような結論」ではあるが、このネガティビティは、理論上、進化の過程で人類に備わった生来の特質とされており、生存のための必須の感情である。

■ネガティブ感情には「メリット」がある

 ここまでで分かったことは、人間を突き動かす根本的な感情は、幸福や快適といった「ポジティブ感情」なものではなく、不安や恐れ、怒りといった「ネガティブ感情」だということだ。

 思い起こせばそうかもしれない。何かに対する怒りによって大きな力を発揮することはないだろうか。また、不安を取り除こうと努力しようと決意することもある。

 先日、メジャーリーグを引退したイチロー選手は、その引退会見の中で、1994年に日本でシーズン210本のヒットを打った後の変化について「急激に番付をあげられてしまって、それはしんどかった」と話している。イチロー選手の偉大な記録が苦しさ、しんどさの中で生まれたならば、ネガティブ感情が生み出すものの大きさも実感できるだろう。

 確かにネガティブ感情は確かに不快だが、その感情の特性をよく知り、上手く利用していければ人生に良い影響を与えてくれるのではないか? 「怒り」は勇気を持たせてくれるし、「罪悪感」は道に外れた行いを正してくれるだろう。さらに、「不安」は危険を見張っていてくれる。

 カシュダン氏とビスワス=ディーナー氏の共著『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』(高橋由紀子訳、草思社刊)は、様々な研究結果を取り上げながらネガティブ感情との上手い付き合い方について教えてくれる一冊だ。

 また、本書の中では、快適さへの警鐘やマインドフルネス批判など、現代の自己啓発やポジティブ心理学への見直しもなされている。もちろんポジティブな感情が不必要と言っているのではなく、ポジティブとネガティブのバランスのとり方が豊かな人生を歩めるかどうかを決めるカギとなる。

 「ダークな面」は私たち誰もが持っているはず。その感情を上手く活用する術を身に付けてみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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