これからの時代は、国境を意識することなくビジネスをすることがさらに多くなるだろう。日本だけに目を向けるのではなく、世界全体を市場と捉え、グローバルに活躍する。そんな人材が求められる。
そうした人材になるために必須のスキルが英語だ。英語の必要性は多くの日本人が認識している。それは、日本の語学ビジネス市場8,666億円のほとんどが英語学習である(*矢野経済研究所による)ということからも分かるだろう。
ところが、その英語がなかなか上達しない。
まず日本にい続ける限り、英語を話す機会がほとんどない。英語を読む機会も意識的に作らない限りはない。そうした環境の中で、英語ネイティブとも堂々とやり取りができる能力をどのように身につけていけばいいのだろうか。
『英語ネイティブ脳みそのつくり方』(大和書房刊)は、マサチューセッツ工科大学でMBAを取得し、英語実践プログラムを開発した白川寧々氏が、そのプログラムの中核をなす英語学習法「ネイティブ・マインド」について説明する一冊で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏も絶賛する注目の本である。
その「ネイティブ・マインド」とは何か?
海外に留学する必要もなければ、多額のお金を投資する必要もない。マインドを英語ネイティブにする。つまり、「英語版の自分をつくり上げて、自分自身をすごくするプログラム」(p.41より)なのである。
これだけではまだ理解できないという人も多いだろう。
この学習法を進める上で大事になるのは、「英語を使える自分はどんな自分か」をイメージすることだ。
例えば、「ニューヨークでニューヨーカーたちと話をしながらアーバンライフを楽しむ自分」というものでいい。今の生活とかけ離れていてもOK。英語版の未来の自分像を思い浮かべるのである。
生活の中で英語を強く意識するための工夫とは?
英語版の自分をつくり上げていくためには足元から。ということで、まずは今の自分の生活圏を英語で説明できることが必要だ。
そこで紹介されている方法の一つが「ポストイット法」。これは自分の部屋にある家具や雑貨などのあらゆるところに、英語を書いたポストイットを貼り付けるというもの。こうして自分の私物が、常に英語として意識されるようになる。
ただ、今の英語力では表現できないものもあるだろう。例えば「ベッド下の収納」は、ほとんどの人がどう英語で言えばいいのか分からない。そんな時は、オンライン辞典などで調べてみる。収納は「storage」、引き出しは「drawers」、ベッドの下は「under the bed」……「これでいいの?」と思うかもしれないが、「この時点では正解はいらない」と白川氏。
むしろ、この時の「え? ベッド下の収納って英語でなんていうの?」という感覚と、とりあえず分からないなりに調べた英語を当てることが大事なのだという。
もう一つ、日常の中に英語を根付かせるために、「ルー語」を使って独り言を頭の中でぼやくという手がある。
「ルー語」とはタレントのルー大柴さんが使う、文章の一部を英語にする表現法だ。これを日常生活の中で使ってみるとこんな感じになる。
「The bed frameが古くなってきたかな」
「The ceilingが雨漏りしてる!」
「Outside of the windowはいい天気」
少しテンションがおかしい気もするが、これが意外と効くと白川氏。英語で独り言をぼやくには、高い英語レベルが必要だ。そこで、ルー語を使い、日々の生きた日本語の中に少しずつ英語を取り入れていくのである。
英語を話す自分はお金をかけずに動画や映画から作れる!
英語を話す自分像をつくる方法も触れておこう。
これは「自分はどんな人になりたいのか」を考えることとほぼ同じだ。だから、ロールモデルを探しておくのは一つの手。そして、その人物になりきり、その人の話し方、使っている英語をマスターする。
実はこの方法はかなり有効だと著者。本書ではそのフローを6つに分けて説明している。
1)映画やTED(講演動画)などの動画を鑑賞する
2)ロールモデル(まねをする人)を決める
3)まねしたいと思った場面のセリフのスクリプトを入手するか、がんばって英語字幕から書き写す
4)そのシーンを鑑賞し、セリフを完コピする。シャドーイングと音読の組み合わせは効果抜群。意味はわからなければ調べよう
5)録音機材を使って、そのシーンの登場人物の口の動きに合わせ、声優さながら音声を吹き込む
6)ロールモデルの口から自分の音声が出ている感動的な動画を鑑賞する
鑑賞する動画はNetFlixやAmazonプライムなどにある気軽に楽しめるコンテンツでもいい。この方法ならば、等身大の英語圏の口語を通して、等身大の思考回路が流れ込んでくるはずだ。
「世界に通用する英語を身に付けることは、世界に通用するもうひとりの自分を生み出すこと」と白川氏は述べる。
本書で書かれている方法は、子どもから高齢者まで有効だ。それは英語を「覚える」のではなく、英語ができる自分をつくり上げていくことが重要だと考えているからだろう。
年齢を重ねると新たなことを覚えることが難しくなるが、英語を話す自分をつくっていくならば、なんだかワクワクする。また、子どもならば、早いうちから英語を使う自分像をつくって英語力を身につければ、あとは思い描いた自分像になれるように突き進めばいいだけになる。
英語学習に対するイメージが大きく変わる一冊だ 。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。