言葉を深く理解し、表現する力。それは生きていく上で必要な力だ。
日本語の専門家である山口謠司氏は、「発見」する力を持ち、それを自分で理解し、人にうまく伝えるための「心の持ち方」と「伝える方法」を学ぶことを「国語力」だと述べる。
理解し、伝わるように表現する。その力を子どもの頃から身につけていく方法をまとめたのが山口氏の『一生使える国語力』(笠間書院刊)だ。小学校就学前・小学校低学年・中学年・高学年それぞれで、どのように「国語力」を育てていけばいいのか、具体的に解説されている。
「国語力」を育むための方法として、本書では「音読」や「読書」などが挙げられている。その中から「書く」という方法をピックアップしよう。
まず大切なのは「書く」ことを好きになること
ただ単に文章を書いても、人には伝わらない。文章は「書き手」と「読み手」のキャッチボールであり、相手の側に立って書くことが大事になる。
とはいえ、まず必要なのは「書く」ことを好きになるということ。3歳から小学校就学までは、書く喜びを味わうことが大切になる。
山口氏は、文章でも絵でも、あらゆる道具を使って好きな色でいろいろなことを「書く」ことが面白いという体験を、子どもにしてもらいたいと述べる。文章であれ、絵であれ、道具によってその表現の可能性を拓くことができるからだ。
そして、その「書く」という体験を通して、自分に合う表現方法を見つけていくのだ。
相手のことを考えたコミュニケーションの基本は「親子の対話」
続いて、小学校低学年はアウトプットの機会を増やし、低学年から高学年では、ターゲットを意識することが大事になる。
アウトプットの機会の増やし方としては「話す」ことがあげられる。
実は、書くことと話すことは同じ。書くことも話すことも自分の中にあるものを発信するというアウトプット。文章が上手な人が話すことが上手なのも、アウトプット力があるからだ。
一方、ターゲットを意識するという点では、話したり、書いたりするときに、相手は誰なのか、何人なのか、どんな話が喜ぶか、喜ばせるためにはどう話したらよいか、どんな言葉を使ったらよいか、などを考えることが必要になる。
自分の言いたいことをだけを話したり、書いたりしてはダメ。受け手について考えることを習慣化することで、自然と視野が広がっていく。
そこで大切にしたいのが、親子の対話だ。話すことがアウトプットの機会になることを挙げたが、その基本となるのが「親子で話す」ということ。しっかりそこで話すことができれば、学校、社会ともっと広い世界に広がっていくと山口氏は述べる。
「国語力」は、人との関係を築き、人と人を結びつけるために必要な力だといえる。子どもの頃から親と一緒に言葉を深く理解し、表現する方法を学ぶことで、大人になってからもその「国語力」は役に立つはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。