「雪で電車が遅れるのがわかっているんだから、明日は在宅勤務にすればいいのに」「子どもが突然の熱で、早退。家で仕事ができたら…」「満員電車に乗らなくても、この仕事、家でできるじゃん」…などと思った事はないだろうか。
しかし、だからといって家で仕事をしても、会社が制度として導入していなければ、サービス在宅残業。企業経営者が「在宅勤務」の必要性を感じ、会社として取り組んでくれないと、やっぱり今日も会社に行かなくてはいけないのだ。
本書『在宅勤務が会社を救う:社員が元気に働く企業の新戦略』(田澤由利/著、東洋経済新報社/刊)では、在宅勤務が企業にどんなメリットをもたらすのか、どのように企業の課題を解決し、より強い会社にしていくのかを、失敗事例を踏まえつつ、企業の経営者に向けて紹介している。
本の帯には、なんと「安倍晋三氏の推薦文」が掲載されている。アベノミクスの三本目の矢「成長戦略」に組み込まれ、「2010年までに導入企業を3倍にする」と数値目標が定められている『テレワーク』。在宅勤務はそのひとつで、時間や場所に縛られない柔軟な働き方は、総理肝いり「女性活用」の重要戦略だからだ。
しかし、総務省の「平成24年通信利用動向調査」の結果では、「在宅勤務」を導入している企業は4.4%。その中で資本金50億円以上の企業に限ると、13.6%という結果が出ている。資本金1000万円未満の企業では、在宅勤務制度を導入しているのは1.2%。中小企業では導入が進んでいない。導入済みの企業においても課題は多い。例えば、在宅での仕事をどう作り出すか。制度だけ導入しても、仕事の進め方が今までのままでは、在宅でできる仕事がほとんどないという事態になってしまう。
「人材確保」「コスト削減」「生産性向上」「災害時の事業継続」など、在宅勤務制度導入による企業メリットは少なくない。これを実現するためには、経営者の理解と、正しい導入方法が必須だと筆者は主張する。
まず「在宅勤務でできる仕事は限られている」という固定概念を捨て、オフィスで行ってきた仕事を在宅でもできるように、組織のあり方や仕事のやり方を変える必要があるのだ。
また、コミュニケーションについても工夫の余地がある。企業ではチームで仕事をするケースが多いため、在宅勤務によってメンバー間の業務コミュニケーションが途切れることになっては困る。一人で自宅作業をすることによる孤独感が、業務の生産性や労働者の健康にどう影響するかも慎重に考えるべきだろう。
ただ、これもメールやメッセンジャー、ウェブ会議などを駆使して「いつもの仕事」を「いつものコミュニケーション」をしながら在宅勤務できる環境を用意することで解決できる。「在宅勤務者と上司」だけでなく、チーム全員が同じようにコミュニケーションを取れるツールを導入することは、在宅勤務制度を根付かせるポイントになるはずだ。
夫婦共働きが当たり前となっている今、仕事と育児を両立できる制度を整えるのは、企業の重要事項だ。40、50代の管理職の社員が親の介護のために転職するというケースも少なくない。在宅勤務をしたいと考えているなら、社長の机に、こそっとこの本を置くのも方法かもしれない。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。