ここ最近、数多くのバラエティ番組に出演し、一般タレントのように脚光を浴びる成人向けビデオの女優を目にすることも多くなった。
これまでの成人向けビデオの女優といえば、一般的にはあまりメディアには出てこない存在だったが、彼女たちのタレント化という現象の中で、より華やかなイメージを持たれつつあるように思える。
しかしながら、成人向けビデオの女優は決して「稼げる」仕事ではない。そんな実態を切り取っているのが2012年5月に出版された『職業としてのA○女優』(中村淳彦/著、幻冬舎/刊)だ。著者は『名前のない女たち』シリーズで著名なフリーライター・中村淳彦氏。
ここでは本書から抜粋して、成人向けビデオの女優の労働条件を紹介したい。
■3つのランク分け
成人向けビデオの女優には「単体」「企画単体」「企画」という3つのランク分けがある。これはプロ野球でいうところの1軍、2軍、育成のようなもの。この3つのどのランクに属するかで、出演料はじめ仕事をするうえでの扱いが全く異なるという。以下、それぞれのランクについて解説したい。
(1)アイドル候補「単体」
「単体」とは主役として一本の成人向けビデオ作品を作ることができ、名前や存在でヒットが見込める女優のこと。単体女優は特定のメーカーと本数契約を結ぶのが普通で、デビューが決まると大々的に告知されて売りだされる。「成人向けビデオの女優=お金になる」というイメージは単体女優から来ているようだが、実際のところ単体女優はごくごく一握りの存在である。
(2)「企画単体」
「企画単体」とは、メーカーと契約をするわけではなく、大々的に売り出されることもないが、単体と同じく1本の作品で主役が張れる女優のこと。ギャラは単体とは異なり、日当である。現在はほとんどのメーカーはこの企画単体を軸に作品をリリースしている。
(3)名前を必要とされない「企画」
「企画」とは無名であり、自分ひとりの女優力では販売が見込めない女優のこと。企画女優は本編に名前が出ることは基本的にない。
■意外とシビアな労働条件
成人向けビデオの女優は経験がないほど価値が高いとされ、出演を経験するほど価値は下がっていくことが多い。そのため、身を切り売りしながら「延命」しつつ仕事を続けるという側面があるという。
中村氏は単体・企画単体・企画それぞれの成人向けビデオの女優のギャラを算出している。