社会人として、どんな形であれビジネスと関わる以上、会計や数字について勉強することは避けて通れません。
しかし、何年も働いている人でも「数字は苦手」「会計は難しい」と苦手意識を持っている人は多いもの。そんな人は今さら難しい参考書を買う気にはならないでしょう。
でも、物語なら話は別かもしれません。
『江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本』(日本実業出版社/刊)は、公認会計士の眞山徳人さんが、数字が苦手な人に向けて、ビジネスに必要な「数字」や「計算」を教えてくれる一冊。江戸の呉服屋「ゑびす」に丁稚奉公に来ている勘助が商売のイロハを身につけていくというストーリーを読みながら、基礎の基礎から学ぶことができます。
■自分の給料に見合った売上はいくら?
「ゑびす」の主人・高光に外回りの営業を任され、徐々に売り上げを伸ばしていた勘助でしたが、月の売り上げが3両(約96万円)に達した時、高光にこんなことを言われました。
「3両ではちと足りん。5両(約160万円)ほど稼げるようになってもらわないとな」
勘助の給料はたったの2朱(約4万円)。安月給の自分にどうしてそんなに大きなノルマが課せられるのかわかりません。
不思議に思った勘助は、困った時に相談に乗ってくれるミキトさんにこのことを話しました。
すると、ミキトさんは勘助に「損益計算書」というものを教えてくれ、こんな話をしてくれました。
・「売上高」から「売上原価」を引いたものが「粗利」であること。
・この「粗利」を十分に稼ぎだすことができないと「販売費及び一般管理費」(人件費・家賃・減価償却費)をまかなうことができないこと。
さっそく勘助は、高光に頼みこんで帳簿を見せてもらい、自分の手で「損益計算書」を作ってみました。
すると、「ゑびす」の文月(7月)の業績は
・売上…28両1分2朱(908万円)
・売上原価…20両1分1朱(640万円)
つまり、粗利は8両1朱(268万円)で、これに「販売費及び一般管理費」が6両3分2朱(220万円)かかっているため、最終的な「ゑびす」の営業利益はたった「1両3朱(48万円)」だったのです。売上高に対して、たったの5%。
これでは、勘助の売り上げが3両である限り、「ゑびす」の経営はカツカツです。