いつの時代でも、「出世」は働く男たちの最大の関心ごとのひとつ。
組織で立身出世するために、策を巡らせている人も多いのではないでしょうか。
『悪の出世学』(中川右介/著、幻冬舎/刊)は、歴史上、最強最悪といわれる権力を持った三人の政治家――ヒトラー、スターリン、毛沢東の出世術を詳細に解説したもの。三人の出世術はあまりに極悪非道であるため、お手本にはならないかもしれませんが、本書を読めば出世についての思索が深まることは間違いありません。
ここでは、本書から抜粋して、スターリンの出世術を一部紹介したいと思います。
スターリンは、よく知られているとおり、ソ連共産党書記長、ソ連閣僚会議議長(首相)として人口二億のソヴィエト社会主義共和国連邦に君臨し、さらに東欧の社会主義国、アジア、アフリカなどの社会主義政権を間接的に支配した、二十世紀最大の権力を持った人物。
さっそくスターリンの出世術を見ていきましょう。
■会議において自分の意見は持たない
スターリンは会議ではいつも最後まで何も発言しなかったといいます。全員がそれぞれの意見を言うのを聞き終えてから、発言していたそうです。
発言する際は、まず、今までに出た意見をいくつかに分類し、それぞれを比較して見せ、その上で結論として自分の意見を述べるという手法を用いていました。
会議に出るまでは自分の考えを持つ必要がなく、他人が発言した意見のなかで最も支持を得そうなものをそのまま自分の意見にすればよかったので、いつしか「スターリンはいつも正しいことを言う」というイメージが出来上がっていったそうです。
■無能に見せかける
出世するには、自分の能力を実際の実力よりも過大評価させるのも一つの方法ですが、反対に、過小評価させることで出世したのがスターリンです。
よく知られているように、スターリンはレーニンに重用されることによって、大出世を遂げました。
ボリシェヴィキの党幹部はインテリが多く、レーニンもエリート階層出身の典型的なインテリでした。その中で、貧しい生まれで、暴力・破壊活動の最前線を指導できたスターリンは異色の存在で、それゆえにスターリンはレーニンや他の党幹部たちから見下されながらも、便利な存在として重用されるようになっていったのです。
スターリンは自分の実力を過小評価させ、ライバルを油断させることで、出世していったと言えそうです。