歳を重ねていけば、体のどこかに不調をきたすもの。健康診断の結果に目を背けたくなるという経験をした人も多いのではないだろうか。
でも、年齢を重ねるごとにますます元気になっていく人もいる。その秘訣は、何なのだろうか。
『元気の源 五体の散歩』(外山滋比古/著、祥伝社/刊)では、『思考の整理学』の著者で90歳にして健康診断オールAという外山氏が実践している習慣を紹介する。
体の調子がよくないので病院に診てもらうことにした外山氏。定期的に受診を始めるようになり、20年。昨年の血液検査の結果、悪いところは1つもなかったという。90歳にして健康。その秘訣は「五体の散歩」にあった。
足の散歩だけでは不十分。手にも口にも、耳、目、頭にも歩かせるという意味での「五体の散歩」は、外山氏の造語だ。
年輩の人間にとって、無為、安静は大敵である。とにかくなにかしていないといけない。することがなければ作るのである。なるべく独りにならないで、できるだけ人とおしゃべりをする。新しい仲間ができればすばらしい。なければつくる努力をする。そうした考え方の中から生まれたのが「五体の散歩」だ。
例えば、口の散歩。人間は年とともに自分の世界をだんだん小さく限定していく傾向がある。だから、年をとると新しいことはできなくなる。それを防ぐには、ほかの人との知的に交流することだ。具体的には、ほかの人と交わることだ。
外山氏は違ったタイプ、さまざまな職業の人たちと雑談会を開いている。雑談会のよいところは、まず頭のはたらきがよくなる。考えの幅が広がる。人のことばの端々に強く刺激されて、それまで思ってもみなかったことに関心を示すことができる。もちろん老化防止になる。
そして、人の言うことを素直に受け入れる心が育まれる。さらに大きいのは健康効果。しゃべることはたいへんなエネルギーを要するため、夢中になってしゃべっていれば、散歩に負けないエクササイズになる。
私たちは用のない、役に立たないことは無駄だと決めつけるが、その無駄の中に思いがけない宝が眠っていると考えるのは人生を豊かにする思考である。それをインスピレーションや閃きと言ったりするが、我を忘れて話し合っているときに、うごめくということを雑談は教えてくれるのだ。
どんなに規則正しく、健康的な生活をしていても、ストレスは溜まるものだ。そのストレス退治に有効な手段が、人とおしゃべりをするなどの「五体の散歩」だ。これからの健康のためにも、本書で紹介しているちょっとした習慣の数々を日常で試してみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。