今年の夏、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」がついにオープンしたばかりのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)だが、さっそく今月12日から大人気のハロウィーン・イベントがスタートした。
ハロウィーン・イベントの集客3倍にしたのは、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演、USJをV字回復させた立役者CMO森岡氏だ。『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(KADOKAWA/刊)には、そのずば抜けたアイデアを生み出すためのメソッドと発狂しそうなくらいドラマチックな3年間の舞台裏、そしてハロウィーン成功のアイデア誕生までの詳細が記録されている。
■ハリー・ポッター成功に繋がるプロダクトは?
450億円を投じたハリー・ポッターがオープンするまでの3年間、時間もお金も限られた中で結果を出し続けなければならない。
そんな状況の中、森岡氏が目をつけたのが秋のハロウィーン・イベント。新しい何かを始めるよりも、既に予定されているシーズナルイベントを大成功させるほうが良いと考えた。ただし、キャピタル(設備投資費用)は使わないこと。その上で新しい価値を作る。それまでは赤字のシーズナルイベントだったハロウィーンを追加集客数で40万人を超すレベルにまで引き上げたその全貌が綴られている。
■人(ゾンビ)こそ最強のアトラクション。40万人以上を惹きつけた施策。
価値を生み出すアイデアの切り口は、「消費者理解」の中に埋まっているという。本来、日本文化にはないハロウィーンを日本人が楽しめるようにするにはどうしたらいいだろうか。
米国に住んでいた経験を活かし、掘り下げた結果が、「ダークサイドを楽しむ非日常」でのストレス発散だ。アメリカ的ハロウィーンの良さを凝縮して、特に日本の女性のために、新しいハロウィーンの楽しみ方を提供しようとした。
その具体的なプロダクトが、「ハロウィーン・ホラー・ナイト」だ。夜になると、昼間の雰囲気が一変し、パークは大量のゾンビが徘徊するホラーエリアとなる。ゾンビにはユニバーサルの特殊メイク技術と演出が施され、最高レベルのクオリティで提供され、ゲストにとっては、思い切り叫ぶことができる空間であり、まさに非日常。しかも、ゾンビは何体雇っても設備投資は必要ない。ここに、今までにないハロウィーンの体験価値を創造することに成功したのだ。
初日の来場者数は、想定の2万人を遥かに超える3倍の6万人、それまでずっと7万人程度で赤字だったハロウィーン・イベントを大きく黒字化とし、最終的に追加集客数で40万人を超える結果をだした。
森岡氏が常に譲れないものとして掲げているのが安全管理とGS(ゲスト満足度)だ。その徹底したクオリティへの思いが、USJのブランドを創っている。消費者理解の中から発想するアイデアと戦略とブランディング。時流に乗った体験価値の創造。さらにその価値は、ゲストが体験したことによってより高まっていく。