仮にあなたが、その道15年の「法人営業のプロ」だったとします。しかし、あなたは最近この仕事に行き詰まりを感じています。「飽きた」ということかもしれないし、単に伸び悩んでいるのかもしれません。あるいはそろそろほかのことをやってみたい、と感じているかもしれません。
そこであなたは人材紹介会社に登録して、コンサルタントに相談します。するとおそらく、こんなアドバイスをもらうでしょう。
「今まで法人営業をやってきたんだから、その経験を生かして次の仕事を探しましょう」
「もうその年で、これから職種替えは無理ですよ」
今とは違うことをやりたいから相談しているのに、「今の仕事をやり続けろ」というアドバイスをもらうわけです。そもそもそんなことは、アドバイスされなくてもすでに十分わかっているのです。そこであなたは途方に暮れますが、仕方がないので今の仕事を黙々とやり続ける、ということになります。
ひとつの専門性に、こだわってはいけない?
これが、(3)知識・スキル、つまり職歴にフォーカスする落とし穴です。
経営学者のドラッカーはかつて、「これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」(『プロフェッショナルの条件』<ダイヤモンド社>)と述べました。
これだけ環境変化が激しい時代に、ひとつの会社、ひとつの仕事、ひとつの専門性にこだわり続けるのは時代にそぐわない、というように解釈できます。
また、人の心の常として、何十年かのキャリアの間に、色々な仕事を経験したいと考えるのが、むしろ自然だという捉え方もできます。あ、もちろん今の仕事を一生続けていきたい、と思っている方はそれで問題ありません。しかし、それでも環境の変化には常に対応していく必要があります。
情熱、資質・才能を見つめ直そう
もし今とは違う仕事で将来のキャリアを作りたいと思ったら、ぜひ
(1)情熱
(2)資質・才能
に戻って、それと(3)知識・スキルをうまく組み合わせられないか、と考えてください。
自分の話で恐縮ですが、私自身は、若い頃から「キャリアデザイン」にとても興味がありました。別に難しい話ではなく、
「どうすれば、自分らしい働き方ができるだろうか?」
「どうすれば、会社や上司の都合に振り回されずに、自分のやりたい仕事をやり続けられるだろうか?」
と考えて、将来の計画を練るのが好きでした。そのために必要だと思えば、自費でトレーニングも受けました。いわゆる自己啓発本もたくさん読んできました。書籍代だけで毎月2〜3万円は使っていたと思います。自分の生活と仕事を自分でデザインすることに、強い興味と情熱がありました。(<1>情熱)
自分でポジションをつくる
そして、私は色々な人に会って話を聞くのが好きでした。私と話をすると「こんなことを他人に話したのは初めてです」とか「お話ししてみて、自分の頭が整理できました」と言われることが多く、おそらくそこに自分の強みがあるんだろうということがわかりました。また、前述したように、普段から色々な本を読んでいましたので、それをできるだけシンプルに、自分なりに整理してプレゼンテーションしたり、人に教えたりするのも得意でした。「お話を聞いて、初めて理解できました」と言われることも多かったのです。(<2>資質・才能)
そういった要素と、人事マンとしての経験(<3>知識・スキル)を組み合わせて、いまは転職や独立など、キャリア全般に関するコンサルティングを行っています。
時々、「小山さんは人事のキャリアがあるからよいですね」と言われることがあるのですが、私に言わせるとこれは順序が逆で、「人事の知識・経験が強みになるようなポジション」を自らつくったのです。もし私と同じ(1)情熱、(2)資質・才能を持っていて、(3)知識・スキルが経理や広告、営業などであれば、そちらが生きるような組み合わせを考えたでしょう。