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絶好調の日立、なぜ年功序列廃止?首相も異例の後押しで、企業に守られる時代の終焉か

文=城繁幸/人事コンサルタント
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 実際、現状においても、労使がしっかりルールを決めれば、賃下げや降格を行うことも可能ですし、キヤノンのように職務給に移行することもできます。ただ、政府が介入しなくても企業が自発的に制度の見直しを実施するかといえば、実際には労使だけでは話が前に進まないのが現実です。

 そこで政府が音頭を取った上で、政労使の代表を交えた席上で「脱・年功序列でいきましょう」と宣言をすることは非常に大きな意味があるわけです。

 同様のものに、オランダのワッセナー合意(1982年)が挙げられます。これも、政労使の代表が「柔軟な賃下げとワークシェアリングを推進すること」に合意し、その後の同一労働・同一賃金に道筋をつけることとなった会議です。政府が音頭を取って民間労使の協議を舵取りすることで一国全体の雇用の流れをつくった画期的なイベントといわれており、今回の政労使会議は明らかにこれを模したものといえます。

 具体的には、賃下げや金銭解雇といったルールを明文化し、「同一労働・同一賃金」の原則を法制化することで、脱・年功序列の傾向を後押しすることになるでしょう。いよいよ企業に身分を保障されていた時代から、個人のキャリアで勝負する時代へと移行するわけです。

●東大文系の評価急落の意味するもの

「ダイヤモンドオンライン」記事『ビジネスマンが本音で評価  「使える」「使えない」大学』は、なかなか示唆に富んでいます。ポイントとしては、

・東京大学文系の志望者が減少傾向にあり、中でも法学部の凋落傾向が顕著である
・私立進学校の中では、米国などの有名大学へ進学する生徒が増えている
・ビジネスパーソンのアンケートで、東大が唯一第1位を獲得した質問は「使えない人材が増えた大学」

 もちろん、ここから見えてくるのは「東大がダメになった」「これからは京都大学や慶應義塾大学だ」という話ではありません。ダメになりつつあるのは、良い大学を出て大企業に就職すれば幸せになれるという昭和的価値観であり、その王道であるはずの東大文系ほど、組織内で見事な空振り三振気味に見えてしまっているということです。

 これからの大学選びでは、上昇志向のある人は最初から海外大学に進学するか、秋田・国際教養大学や立命館アジア太平洋大学のように徹底した国際的な実務教育志向の大学に進むのが主流となるでしょう。東大の秋入学や一橋大学の留学義務化プランは、この新たな流れになんとかして食い込もうという土壇場の踏ん張りといえます。「大学としての気概はないのか」などと小言は言わずに、温かい目で見てあげましょう。

 もちろん、これはこれから大学進学する人にだけ関係する話ではありません。ソニーやパナソニック、日立の年功序列廃止を見ても明らかなように、恐らく10年後には多くの日本企業で年功序列は廃止され、少なくとも組織内において人材は流動化しているはずです。つまり、そのようにして昭和的価値観を脱した新型エリートたちと、大学入学時が知的水準のピークだったような昭和型人材が同じ土俵で戦わねばならない時代がそこまで来ているのです。今からその点を意識しつつ、新型エリートとの戦いに備えることもまた、キャリアデザインの重要なポイントでしょう。
(文=城繁幸/人事コンサルタント)

※本稿は、城繁幸氏のメルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」から抜粋・編集したコンテンツです。

【筆者プロフィール】

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●城 繁幸:人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。
ビジスパにて、メルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」を配信中。
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