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日本への強制送還も多発!? 「ビザ奴隷」「無給インターンシップ」

無償、劣悪な待遇でコキ使われる米国留学生たちの現実

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 一方、インターンシップ期間が終わった若者は、資金もビザの期間も底をつき、最悪は日本へ帰国するという羽目になってしまう場合も多いのだ。

 なんとか就職にこぎ着けても、企業側もビザの件は熟知しているため、どうしても足元を見られ、提示される待遇は決してよいものとはいえない。また、解雇された時点でビザも無効となるため、悪条件といえども辞められないジレンマに悩まされる。

 このように、不本意ながらビザのために我慢しなければならない状況を指して、「ビザ奴隷」といった呼び方まであるほど、このような悪状況は広く蔓延してしまっている。

「ビザ奴隷」に「無給インターンシップ」。

 いずれも現地の生活が長い日本人たちには広く知られているのだが、今まさに米国にやってきたばかりの若者たちには、その不条理が見えにくい。これを悪用しようと考える企業が、毎年何も知らない若者を無償でインターンとして採用していく、もしくは低い待遇で社員を雇用し続けていくことが可能となっている。まさに「女工哀史」の世界だ。

 もちろん米国の一流企業に就職すれば、このような問題は解消されるが、そのような人材はごく一部。米国内でも失業者があふれる現在、このような状況が連綿と継続してしまうこととなっているのである。

 ここまでの事例は、どちらかといえば米国で創業された零細企業に多いケース。一方、誰もが知っている日系の大手企業に就職できた場合にも、別な問題がある。

日系企業の現地採用という落とし穴

 それは「現地採用」という落とし穴だ。大企業ともなれば本社から多くの駐在員がやってくるのが常なのだが、彼らと、現地で採用された社員との待遇の差が、驚くほど大きいのも、米国で就職活動をする若者たちの悩みの一つ。給与格差はもちろん、家賃補助や健康保険など福利厚生の面でも、明確な差を付けられているケースもしばしば。駐在員は郊外の高級住宅地に一軒家を構える一方、現地採用社員は小さなアパートで、似たような環境のルームメイトと同居、というケースも多い。

 もちろん駐在員の多くが役職者として責任ある仕事をこなしているという事情もあるのだが、あまりにも格差が大きいこともまた事実。先の「ビザ奴隷」「無給インターンシップ」のようなケースほどではないが、やはり夢を持って海外に出て行った若者をくじけさせてしまいかねない悪習であるといえるだろう。

 不景気も相まって、現在海外に留学する日本人の若者は、どんどん減っているという。一方、中国や韓国といった他のアジア諸国からは、ますます多くの若者が米国の大学に留学している現実と比較すると、いささか寂しいものがある。今後世界の舞台で活躍できる若者を、一人でも多く輩出するためには、海外におけるこのような不公平、搾取にも近い状況を払拭することが必須ではないだろうか。

 そして、前述した日系大手企業の駐在員たちには、

「まずは自ら襟を正す姿勢こそ、日本のビジネス、ひいては日本人ならではの美点である」

ということを、認識してほしい。
(文=田中 秀憲/NYCOARA,Inc.代表)

●田中 秀憲(たなか・ひでのり):NYCOARA,Inc.代表
福岡県出身。日本国内で広告代理店勤務の後、99年に渡米独立。04年、リサーチ/マーケティング会社、NYCOARA, Inc.を設立。官庁/行政/調査機関/広告代理店などのクライアントを多く持ち、各種調査や資料分析などを中心に、企画立案まで幅広い業務をこなす傍ら、各メディアにて寄稿記事を連載中。小泉内閣時代には、インターネット上での詐欺行為に関するレポートを政府機関に提出後、内閣審議会用資料として採用され、竹中経済産業大臣発表資料の一部となった。

BusinessJournal編集部

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