ここ最近、飲食業やコンビニエンスストア等の小売店の深刻な人手不足がしばしば取り沙汰されるようになり、時給アップなど待遇の改善によって人を集める「争奪戦」の様相になってきています。
そうなると、必然的に注目されるのが「外国人労働者」です。
都心のコンビニやファミリーレストランで、カタコトの日本語を駆使して働く外国人を見る機会が増えたという人は多いはずですが、それもそのはず、厚生労働省の資料によると、日本で働く外国人労働者の数は年々増え、2013年10月末の次点で71.5万人となっています。
ただ、彼らが日本の社会に溶け込んで働いているかというと、必ずしもそうとは言えません。大手居酒屋チェーンでの外国人労働者への差別が話題になるなど、彼らを受け入れる企業側の態勢は、まだまだこれから整備しなければならない部分が多いのです。
今後、安定的な労働力として外国人とどう向き合うかは、各企業の考え方次第なのでしょうが、「牛たん とろろ 麦めし ねぎし」を、東京中心に35店舗展開している「株式会社ねぎしフードサービス」(以下、「ねぎし」)の取り組みは、この問いへのヒントを与えてくれます。
待遇も賃金も平等!「ねぎし」の外国人雇用
『日本でいちばん「親切な会社」をつくる—牛たんねぎしの働く仲間の幸せを考える経営』(根岸榮治/著、ダイヤモンド社/刊)によると、「ねぎし」で働く外国人労働者は約300人にのぼり、その8割は中国人。
「ねぎし」は、彼らを「人手不足」だからという理由だけで雇用するのではなく「会社の成長を担う人財」として扱い、彼らの教育と育成を古くから行っています。
その最たるものが「Fパートナープロジェクト」と呼ばれる同社オリジナルの教育プログラムで、「Fパートナー(=外国人労働者)」が仕事だけでなく、日常生活においても日本で快適に過ごせるような研修を行っています。
たとえば、日本語の複雑な敬語は、独学ではなかなかマスターするのが難しいと言われますが、「ねぎし」ではこれをしっかりと教え込んでいるといいます。また、働く理由が「お金を稼ぎたいだけ」というのが珍しくない彼らに、「お客様のために」という日本独特の奉仕の精神を、研修を通じて伝えているのも特筆すべき点。もちろん日本人スタッフとの間に賃金の格差はなく、アルバイトから正社員への登用も積極的に行っています。
「教えることはきちんと教えたうえで、日本人と平等に扱う」のが「ねぎし」の外国人労働者との向き合い方。こうした取り組みの結果、「ねぎし」における外国人労働者のES(従業員満足度)は90%以上と、驚異的な高さだといいます。
本書には、「牛たん」の味のみならず、「日本経営品質賞」「農林水産大臣賞」など官民問わず様々な賞を受賞し、その経営手法が高い評価を受けている「ねぎし」の理念や戦略が、経営者である根岸榮治さん本人の手によってつづられ、外食不況の今でも安定成長を続ける同社の秘密が明らかにされています。
外国人も日本人も使い捨てにすることなく、ともに成長していこうという同社の姿勢は、飲食業でなくても学ぶところは多いはずです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。