部下を持ったり、チームリーダーをしたことのある人ならば、メンバーをまとめて最大限の成果を出す難しさを知っているはずです。
どんなに精鋭揃いでも、リーダーの言動や行動一つで、チームを最高にも最低にもしてしまうというのが、マネジメントの怖さであり醍醐味。
では、大きな成果を出しているリーダーはどんなマネジメントをしているのでしょうか。
帝京大学ラグビー部を率いて、現在全国大学選手権6連覇中の岩出雅之さんは、著書『負けない作法』(森吉弘氏との共著、集英社/刊)で、最強チームを作り上げたマネジメントの哲学を明かしています。
■「自分づくり」に熱心すぎる選手は評価しない
自分を磨いて、高めようとする向上心はラグビーでも仕事でも大事なことです。
岩出さんもこの「自分づくり」については否定しないどころか、むしろ「負けない」ために必須のことだとしています。が、この意識が強いあまりに、自分に関係すること以外は「時間と労力のムダ」と考えるようになってしまうと、これは大問題です。
チームで行う以上、最優先されるのは「チームが結果を出すこと」。「自分づくり」に熱中しすぎるあまり、この最優先事項への気持ちがおろそかになる選手は、岩出さんも高くは評価しないと言います。
■「フォア・ザ・チーム」にひそむワナ
ただし、「チームのため」「他人のため」「組織のため」に行動できればいいのかというと、そうとも言えないのがマネジメントの難しいところです。
「自分が、自分が」という自我の強さは、多かれ少なかれ誰もが持っているものですが、これを自覚せずに「チームのため」「他人のため」にとがんばりすぎて自己犠牲的になってしまうと、今度はいつのまにか見返りを期待するようになります。
こうなると、「自分はここまでチームに尽くしているのに、なぜ報われないんだろう」「私がやったのだから、あなたもやるのは当然だ」という、相手への要求が生まれてきてしまいます。「チームのため」「他人のため」と始めた行動がこれでは、本末転倒です。「チームで結果を出す」という優先事項からは離れてしまっています。
自分が満たされる前に、相手を満たすことはできません。まずは、本当の意味で自分を大切にできること。それができてはじめて、見返りを求めず他人のために動くことができるようになるのです。
■リーダーが犯しがちな勘違い
また、岩出さんはリーダーが犯しがちな勘違いについても言及しています。
その勘違いとは、チームを率いる立場だからといって、自分がメンバーや部下に「優劣」をつける立場だと思ってしまうこと。
リーダーは、チーム全体やプロジェクト全体を一段高いところから俯瞰的に見る目が求められます。その視点の位置の高さから、自分はメンバーより偉いと思ってしまうのです。
この勘違いを犯すと、「この人はできる、あの人はできない」とメンバーに優劣をつけることになり、さらに勘違いが進むと、意に沿わない人を排除することにつながります。
これでは、「チームをまとめ上げて、目標を達成すること」というリーダーの本来の役目を果たしているとは言えません。